銀髪おっとり美女、聖剣の手がかりを得る

「何だよ子作りファイトって!だからその前にこの状況を説明してくれ!」

「うむ。数時間前にな、ここに『よばい』に来ようとしたら皆と鉢合わせての」

「鉢合わせんな。何やってんだお前ら」

「わらわはアディと子作りをせんといかんから譲れと言うたんじゃ。そしたらマリアが『みんなでやればいいじゃない』とか言うでな。子作りとは一対一でやるものだと聞いておったのにおかしいと思うたからの、マリアに子作りとは何をするのか詳しく聞いたんじゃ」


 何だか頭が痛くなってきた……。

 もうここまでで大体の話がわかってしまう。


 マリアの方を見ると、舌を出しててへっみたいな表情をしている。


「そしたら子作りとは、ベッドの上で異性と激しく戦うものだそうではないか」

「案外そこまで間違ってはないな……」

「というわけでじゃ!アディ!わらわと戦え!そして子供を作るのじゃ!」

「落ち着いて考えてみろ。それでどうやって子供が出来るんだよ」

「……ではどうやったら子供が出来ると言うのじゃ?」


 エリーってたしか16歳だっつってたよな……。

 何でそういうことに関しての知識がないんだ?


 何だか本当のことを教えたらまずい気がする。


「……い、いやていうかだな、お前らこんな時間まで起きてて眠くないのかよ」

「うむ。正直な、頑張って起きておったから眠いのじゃ。ほれ、さっさと子作りを済ませようぞ」

「デリカシーゼロかよ」

「何を言うておるのかわからぬが……とにかく行くぞ!!」


 それから朝までの数時間、俺とエリーの無意味な戦闘が繰り広げられた。

 戦闘が終わると、全員そのまま俺の部屋で爆睡。


 目が覚めると何と夕食時なのであった。


「一体俺たちは何をしてるんだ……?」

「本当よね」

「マリア、そもそもお前がエリーに変なことを教えるからだろうが」

「いや、本当の子作りってもんを教えたらライバルが増えちゃうかなって」


 俺は、そこでちらりとリリスに目をやった。


「リリスは何であの時縛られてたんだ?」

「そういうのが好きらしいわよ」

「そうだったのか……」

「マリアちゃん……変なこと言わないでよっ」

「だって前みたいに暴れられたら困るじゃない?このお屋敷壊したら修復するのにもすごくお金がかかるわよ」

「うう……」


 リリスは前の家で俺の部屋を半分壊した実績があるので反論出来ない。

 まあ、今回ばかりはマリアの判断が正しいな。


「まあまあいいじゃありませんか~私は楽しかったですし~」

「うむ。またみんなで遊びたいものじゃな!」

「とにかく、聖剣探しはまた明日だ。今日は早めに寝るぞ」




 翌日。俺たちは各自別々に情報収集をした。

 そして夕食時、飯を食べながらお互いの成果を報告し合う。


 最初に話を切り出したのはサラだ。


「お花屋さんから有力な情報を得られました~」

「お、よくやった。それでどこにあるって?」

「何でもオイッスオイッス大迷宮にあるのだとか~」

「何て?」

「オイッスオイッス大迷宮です~」


 いや、名前自体は一回目で既に聞き取れているのだが。

 どう反応したもんか……。


「その情報って本当に信用出来るのか?名前からしてエクスカリバーがあるようには思えないんだが……」

「アディ!何でも名前や外見で物事を判断するのはよくないぞ!」


 エリーに説教をされてしまった。


「まあ、聖剣そのものが伝説上の存在だからね。有力な情報を掴んだらガセ覚悟で確かめに行くしかないと思うわ」

「マリア……お前たまにはまともなこと言うじゃねえか」

「もっと褒めてくれてもいいわよ」

「リリス、お前は何か掴めたか?」


 リリスは申し訳なさそうな表情をしている。


「いえ……私の方は何も……ごめんなさい」

「そんなに気にすんなよ。マリアの言う通り、伝説なんだから」

「うう……お役に立ちたいのに……」

「じゃあ他に有力な情報もないことだし、そのオイッスオイッス大迷宮とやらに行ってみることにするか」


 ひとまずオイッスオイッス大迷宮とやらへ向かうことが決定。

 また翌朝、俺はダンジョンの情報を得るために冒険者組合へ来ている。


 冒険者組合ではダンジョンやモンスターなんかの情報も教えてくれるサービスがある。

 情報収集を他人任せにし過ぎると冒険者としては失格だが、地図をもらうくらいならばいいだろう。


「よっ、エルザ」

「あら、アディ。おはよう」

「オイッスオイッス大迷宮ってのがどこにあるのかを知りたいんだ」

「じゃあ周辺の地図に印をつけといてあげるわね」

「頼む」


 それからエルザが地図に印をつけて渡してくれた。


「あそこはダンジョンにしかいない『守護者』というモンスターが特別に強いと聞いているわ。アディ、気を付けて行って来てね」

「ありがとう。無事に帰ってきたらまた飲もうぜ」

「ええ、待ってるわ」


 やべえ順調すぎる……やっぱりエルザは最高だ。

 家に帰ったら「子作りファイト」とか言って襲い掛かってくる連中とはわけが違う。


 冒険者組合と併設の酒場で待機している女性陣。

 正直ダンジョン探索となれば本格的に一人で行った方がいいんだけど、そういうわけにもいかないだろうな……。


 純粋無垢な瞳をこちらに向けてリリスが聞いて来る。


「勇者様、地図はもらえましたか?」

「この通りだ」


 俺は、もらった地図をみんなに見せた。


「では早速出発じゃ!」


 何故か妙に張り切っているエリー。


 この時はまだ誰も知らなかった。

 まさか聖剣探しがあんな大変なことになるなんて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る