第12話 いつかはこうなる気もしてたけど。
三学期。
恐れていたことがついに起こりました。
なんと、妹が不登校に~!!
1年生の娘、兄貴につられてか、しばしば「お腹痛い」とか「ふらふらする」とか言って休みがちだったのですが、3学期になって初っ端から「気分悪い」と。
まあね、ある程度仕方ないなあ、とは思うのです。
だって、「それくらい大したことないでしょ、行ってきなさい」なんて言葉、あまりにも説得力がないのですよ。
目の前に転がってる兄貴がいるんやから。
それでも、今回のはなんかちょっと様子が違って。
普段なら一日二日休めば回復して行けてたはずなんやけど、日々なんかの理由が出てきていけない。
「制服がイヤ」
「休み時間が何していいのかわからん」
などなど。
最終的に原因として挙げられるのは、「知らん子に廊下で叩かれた」というもの。
でも、誰かも分からない、いつだったかも分からない、曖昧な情報で。
ものすごく刺激に弱いというか、影響を受けやすいタイプのチーコさんは、人がされてるのを見ても自分の事のように思ってしまう人なので、目撃しただけなのかもしれないし、実際あったことなのかもしれない。妄想かもしれない。
手の打ちようがないのです。
先生も電話をくれたり実際顔を見に来てくれたり、手を尽くしてくれて。
なんとか、最初3日連続休んで翌週は何とか遅刻しながらいって、先週は金曜の3時間目からだけやっと行けて。
綱渡り状態です。
友達もいる、先生の事も大好き。それでも行けない。
やっぱり兄貴の影響何やろか。
もちろん、兄貴が学校に抱いているトラウマのことなんかは知ってます。
1年生なりの理解力やとは思うけど。
「あの先生のせいでカースケさんは行けないんやな」
くらいは、ちゃんと分かってる。
でも、それとこれとは別で。
「なんで私だけ行かなあかんの?」
そういう気持ちも出てくる様子。
彼女の思いは、まあそりゃ妥当やわな。何かしらしんどいことがあればなおさら。
やっぱり、「学校には行くのが当然だ」という下地がないというのは、かなり厳しいものがあるなー、と。
カースケさんは、あのことがあるまでは学校には当然行くものと思ってたから。
ていうか、学校大好きやったから。
でも、妹のチーコさんにはそれがない。
それどころか、学校というものは「歪められてしまうもの」なんです。
自分の兄貴が学校に歪められてしまった、その過程を見て、肌で感じてしまってるんやから。
なんかなー。
育て方が悪かったと言われたらそれまでやけど。
カースケの、たとえば「死にたい」だとか「家出する」だとか、そういう言葉をチーコさんに聞かせずに済ますことができなかったのは、私のせいなんやけど。
それでもできるだけ、カースケさんに手がかかっている分チーコさんに寄り添って、かつカースケさんを一人にしない方法を、「共に過ごす」以外に探せなかった。
一緒に暮らして、私に執着のあるような二人を傍においている限り、ああいう発言をチーコさんの耳に入れずに済ませることは不可避だったんです。
「なんでカースケさんそんなんになってもーたん?」
ってチーコさんは言いました。
「3年までのカースケさんは普通のお兄ちゃんやった。普通のお兄ちゃんがいい!」
これは、たぶんカースケにもショックやったと思う。
実際彼は、チーコさんが行けなくなったのは自分のせいもある、と感じているので。
でもチーコさんの言うことは、至極当然のこと。
聞きたくないよ、そんな言葉。
楽に死ねる方法とか、家出と自殺の選択とか。
特に、刺激に弱いチーコさんには、どれくらい衝撃やったやろう。
無力な母は、ぎゅってして撫でて寝かせるしかできんかった。
どうしたらよかったんかなぁ、今まで。
どうしていけばいいんかなぁ、これから。
今現在、カースケさんがそこまで死にこだわる理由を探るべく、病院を変えてカウンセリングをしっかり受けさせるように動き出したところで。
チーコさんには「発達モニター」というのを申し込み、必要なら医療機関の受診やプレイセラピーを受ける手はずを整え。
それでも、日々は待ってくれない。
明日の月曜日、果たしてチーコさんは行けるのでしょうか。
そして、カースケさんは、この妹のことをどう捉えているのでしょうか。
我が家はまだまだ、渦からは脱出できそうにないのです。
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