第10話 彼の特性
どうしても、現状の不登校の方へ目が行ってしまいがちなんやけど、あの子の持つ障害というものは不登校以前から根強くあるもので。
不登校になった原因の担任の暴力も、あの子の障害特性が一つの要因として考えられるわけです。(だからって絶対許さんけど。事前にあの子が自閉スペクトラムであることはキチンと伝えてたし)
で、今回は、そちらのお話。
よく言われる自閉症の特性に、いろんなところに気が散って集中できない、もしくは逆に一点に集中しすぎて周りが見えなくなる、というのがあって。
カースケさんの場合は、好きなことに集中しすぎてそこから抜けられないタイプ。
例えば、ゲームに集中してたらほかの友達の誘いなんか絶対断る、デイのお迎えが来ても行かない。行かなければならない用事もすっぽかす。
気持ちの切り替えがほんとーに下手くそ。
自分の集中を遮られたくないんやろね。
だから、学校での休み時間に読書に集中してたら授業そっちのけで本を読んでたり、前の時間のトラブルとかずーっと引きずって、授業に気が向かなかったり。
それを注意する先生、反発するカースケ。そこからのトラブルが現状を生み出したんやろうな、ということは容易に想像できたりする。
当然、本人にもちゃんと切り替えるように伝えてはいるけど、根っからの性質は自力ではなんともしがたく。
家でなら、とにかく、あらかじめの予定を紙などに書いておき、出掛けなければならない10分前、5分前、3分前、という感じで声を掛けてゲーム終了に導いてみたりしてる。
それでも無理なときは無理やけど…
何もしないよりは、本人の準備を助けるものにはなってる気がしてはいるかな。
それともうひとつ、彼の特性の中の最重要ポイント。自己肯定感の低さ、という奴が本当にクセモノで。
これは何より、診断がつく以前から、ウチの子の大きな問題点としてずーっと言われていること。
なんていうか、自分自身の価値を一かけらも信じてないというか。
変なプライドはあるくせに、「どうせオレなんて」精神がしみついている。
だから他者から寄せられるささいな感情に対してすごくひねくれた見方をしてしまったりするし、自分を大切にできないから自傷未遂を起こしたりしてしまう。
発達検査の結果からこのことに関して言われたのは、ウチの子は基本平均以上あるんやけど、その中の分野でできるもの、できないものというのがくっきり分かれていて。
そのできる部分に期待した本人や周りが、できない分野に対しても「できる」を求めてしまったあげく、できないことに自分で失望することから、どんどん拗れていくらしい。
バランスの悪さが招く弊害のひとつ、ということになるそうで。
ああ、自閉スペクトラム、厄介(汗)
困ったのは、今のような不登校、部分登校という形になってからさらにこの部分が強くなってしまったこと。
たとえば、なんとか学校に行こうと決意しながらも実際行けなかったときなど、すぐに「死にたい」「もう全部がイヤ」みたいなね。私のスマホにそんなメッセージがばんばん届いたりするわけです。
仕事中に、「死にたい」の一言で電話を切られたときの母の気持ちよ。
「どうせかまってちゃんやろ?」なんて、侮ることなかれ。
発達障害の人の自殺率は、通常よりも高いのだそうです。かかりつけの先生に聞いたから、たぶん間違いない。しかも、「なんで今?」というようなタイミングで図られることが多いとか。
確かに、かまってちゃんはかまってちゃん。
否定はできないし、実際わが子と向き合っている中で「こいつはメンヘラ女か!?」と思うことも多々あって。
でも、統計的にそんなこと言われたら、流すに流せないじゃないですか。
悪いことは悪いと諭しつつ、彼本人の人格は否定せず。
危険物さえ没収してしまえば、ある程度離れたところでクールダウンするのを見守るのか一番いいんやろうけど。
分かっちゃいるけど本当に扱いが難しい。
やっぱり、こちらも感情のある人間で、そんな言動に揺さぶられない訳がないのよ。
ある程度までは耐えるよ。でも。
私の人間の小ささゆえか、あまりにも安易に(本人にとっては真剣なのかもしれんけど)死を語られると腹立って腹立って。
前に、散々死にたいやらなんやら言うて大喧嘩した直後に、鼻炎のせいで「こっちの鼻、息でけへーん」と泣き付かれたときは、「お前死にたいなら鼻づまりぐらいでごちゃごちゃ言うな!反対側の鼻の穴も詰めたろか!!」言うてしまった…
あかんねん。
こっちが感情的になってもいいことないねん。
分かってはいても、実戦となるとほんと難しい。
その一件で、なんとかカースケさんから「これからは死にたいという言葉に逃げない」と約束をもぎ取れたので、結果オーライということにしてるけど、本人の成長と共に親も精神修行をしっかりとしなければならないのだ、と改めて感じた次第。
親の勉強、成長も、この子の成長には欠かせないのだな、と心に刻む毎日です。
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