第2話 包丁持ち出し事件

まずは、医師の診断を受けさせようと考えたきっかけを。


とりあえず、普段からややこだわりが強く、「ん??」となることが多かったカースケさん。

診断を受けさせる前後はかなり不安定で、感情の揺れの幅が大きくなると、「死んでやる」とか「自殺する」などの暴言、さらに頭を机にぶつける、など危険な言動が多かった。


どのように対処するか悩みつつ、全力でぶつかってはこっちもボロボロになる、そんな日々だったわけで。


そして、ついにきっかけとなった出来事。「カースケ包丁持ち出し事件」が起こる。


その日はカースケさん、習い事の日で、あと少しで行こうか、というときだった。

学校から習い事までのその少しの時間に、たまたま友達が遊びに来てしまい、そこでカースケさんの心はまず揺れたようだ。


「このまま遊びたい」

「習い事には行かないといけない」

この感情のせめぎ合いが、カースケさんの中で収拾がつかなくなったようだ。


ここで、カースケさんの性格(というか、これも障害の特性になるのか?)も大きく関係してくる。


カースケさん、基本真面目な性格だ。

決められたルールは、彼にとっては「絶対守らなければならないもの」となる。


「これくらいまあいいか」

「ちょっとぐらいいいや」

そういう曖昧なことが苦手、というか融通が効かないというか。


その性格が、このときは災いした。


「習い事とは、行かなければならないものだ」

「これは守るべき決められた事実だ」

「それでもやりたいのは友達と遊ぶことだ」

「しかし習い事には行かなければ」

「遊びたい」

「行かなければ」


BOMB!!


たぶん、彼の脳内はスパークしたことだろう。この感情のせめぎ合いに耐えられなくなった彼は、どうしようもなくなってキッチンの包丁へと手を伸ばした。


気付いた私の母と、来ていた友達の必死の説得により、幸い事なきを得たのだが。


何かあるごとに、包丁なんかを持ち出されたら。

今回は何事もなかったけれど、もし自分自身やもしくはそのとき近くに居る友達を傷つけてしまったら。

独りで家に居るようなときに、勢いで刃物を自身に向けてしまったら。


これは、一刻を争う事態なのではないだろうか。私の中に、そういった焦りが生まれたわけである。


そしてその夜、先に帰ったダンナに夕方のことを叱責され、第2の事件が起きる。


たまたまそのときにダンナが使った言葉、「そんなことを繰り返していたら、いつか見捨てられてしまうよ」

これに過剰に反応したようだ。


これにも、彼の特性がまた関係してくる。

カースケさんには、比喩的な表現が伝わらないのだ。


たとえば、「〇〇してたら△△になってしまうで」なんて言ったとしよう。

これを聞いたカースケさんは、「俺は△△になってまうんや!」とパニックになってしまう。

〇〇してたら、なんて部分は飛んでしまうのだ。

彼にしっかり伝えたいなら、「◇◇出来るように◎◎しよう」と、肯定的な表現を使わなければならない。

しっかり、ビジョンを思い描けるような。


それもまた、診断後に勉強したから分かったことで、当時は普通にダンナのようなこんな言い回しをしてしまっていたわけで。


コタツにもぐっていたカースケさん、再び包丁の方へと向かおうとする。

それを察知した私、必死に止める。


もう、プロレス状態。


小2で細身のカースケさんでも背は高い方やし、こういうときの火事場の馬鹿力的なパワーってほんとすごい。


女の割にデカい私(169ある。寝てたら伸びた)でも、止めるのに必死。翌日筋肉痛になるほどだった。


これはもうダメだ。


きちんと白黒つけなければ、きっと同じ事を繰り返す。そして体の成長とともに、それは大きなケガを生んでしまう。


自分で言うのもなんやけど、そこからの私の動きはとても早かったと思う。


いろいろな選択肢から、まず最初の相談先をかかりつけの小児科に決める。

そこから先生の知り合いである隣の市の小児神経も専門的にやってるクリニックに紹介状を書いてもらう。

即電話で予約を取り付け、会社に有休を申請。カースケさんの学校にも事情を伝える。


たぶん、最初の診察までに1週間もかからなかったと思う。それだけ焦っていたし、無意識下で一番早く決着のつく方法を選んでいたのかなー、と。


もちろん、そこはクリニックで、しっかりした心理検査は大きな病院に紹介、となったので、確定診断までは一ヶ月ほどかかったけれど。


ちなみに、一般的なルートとしては、まずは学校に相談、そこから教育委員会関係の発達相談に行くのが多いらしい。そこから順番を待って相談、診察、検査となるようで、最初の順番待ちで2~3ヶ月かかるみたい。


そんなことは知らず、ただ学校とか教育委員会とかにあんまりいい印象がなかった私は、診断がついても学校に言うかどうかを正直決めかねていて、それなら学校が絡まん方がいいやろ、とそれだけの理由で動き回ったわけで。


まあ何にしろ、急激な変化を自分で起こしたくせに流れに乗ることに必死で、ドッタバタしてた2月、3月だったのだ。


書いていて、思い出して、あまりにも疲れたので(笑)いったんここまで。

続きはまた後日。






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