第五話 斡旋所巡り
―酒場兼斡旋所 ドラゴンの酒樽―
「ああん、なんだって? ここはうるさいからもう少し大きい声で頼む! 依頼が欲しい? じゃあ、勇者だって証拠を見せてもらおうか! まだ勇者になってないだと? じゃあ、お引き取りを! うちは勇者以外お断りしてるんでね、出口は真後ろだ! ほい、エール三杯お待ち! さらにエール五杯追加ぁ!」
―ヘルミアの専門斡旋所―
「ようこそお越しくださいました。やる気は十分あるご様子で。現在この斡旋所では、多くの勇者や傭兵の方々にご利用していただいている状況です。今斡旋できる依頼は少ないのですが、あなたが勇者様であるならば、優先して依頼を回せると思います。え、勇者ではない? そうですか、でしたら新しい依頼が来るのは……一週間後になると思われるので、こちらの紙にお名前を記入していただいた後に、この札を持って一週間後に来ていただければ、依頼を斡旋できると思います」
―宿屋兼斡旋所 剣の鞘―
「はい、部屋ですか? 依頼ですか? 依頼の方ですか……申し訳ない、今朝方に勇者様が引き連れた団体さんがあらかた引き受けてしまって。はい、全部です。うちの店がもう少し大きければ、お客さんに斡旋出来る依頼もあったというのに、本当に申し訳ない。あ、お帰りですか? 良い一日を!」
―斡旋所兼喫茶店 乙女とカップの宴―
「いらっしゃいませー! お一人様ですか? ご依頼の斡旋ですね。カウンターにどうぞ!」
「いらっしゃいませ。随分お疲れの様ですね、お水出しておきます。ご依頼は、丁度一つありますね。大ネズミの駆除だそうです。あ……申し訳ありません。依頼人の方が勇者にやってもらうように指定していらっしゃるので、残念ながらこちらの依頼も斡旋することは出来ないようです。やっぱり、ですか。お力になれず、すみません。それではごゆっくり。水のおかわりは、ご自由にどうぞ」
―占い館 皺 『斡旋始めました』―
「おやおや、ようこそ。占いをご所望かな? それとも占いでそなたに最適な依頼を見繕う斡旋所をお求めかな? いや、言わずともこのババには分かる。斡旋所じゃな。よろしい、ではそなたにぴったりの依頼を探し出そう。むむむむむむむむむむ……そなたに合った依頼はないようじゃ。仕方ないのぉ。ん? なぜ手を出しているかって? 占った分の料金を払ってもらうためじゃよ。ほら、はよ。銅貨一枚じゃ」
―道具屋 カンコドリ 『依頼の仲介、斡旋もします!』―
「ぐー、ぐー、ぐごー……はっ、はい! いらっしゃいまあせぇ! 便利な日用品から冒険を助けてくれる万能道具まで揃えた、道具屋カンコドリによく来てくれました! いえいえ、寝ていただなんてそんな訳ないじゃないですか、やだなぁお客さん。して、何のご用で? 依頼? そんなのありませんよ。え、表に斡旋もしますと書いているって? 依頼があるとは書いてませんよ。世の流れに乗って斡旋業を始めたものの、上手いこといかなくてねえ。何で誰もウチに依頼を持ってきてくれないんでしょう。ずっと待っているんですけどね。なんですお客さん、その呆れたような顔は。お、その砥石に目をつけるとはお目が高い。お一ついかがですか?」
―露店式斡旋所―
「うい、良い天気だな、にいちゃん。勇者じゃないけど依頼が欲しいって? 別に勇者かどうかは気にしないが、俺のとこの依頼はちょいと特殊でね。知りたいか?いわゆる開拓団ってやつに入るんだ。帝国の領土を広げるために遠い遠い辺境へ行って、そこでずっと土地を開き続ける。一生ものの仕事だ。よほど人生を投げ捨てたい事情でもなけりゃ、おすすめはしない。行くのは遠慮するが開拓話に興味あるって? 奇特な奴だな。話くらいは聞かせてやるよ」
―貸し馬屋兼斡旋所 ひづめ屋―
「依頼かい? あるよあるよ。どんなのが見たい? 兄貴、お客さん来たよー!」
「こっちは馬の相手で手が離せん! 姉さんと接客してくれ」
「姉さん! どこー?」
「はいはいはーい。遅れてごめんなさいね。勇者の資格がなくてもやらせてくれる仕事? ちょっと待って、今探すから。よいしょっと」
「お客さん、勇者じゃないの? へー、役者から転向したいから、出回ってる依頼を調べてるんだ。いいなぁ」
「うーん、資格がいらない依頼は少なめですかね。ほら、二つくらい。勇者業は大変って聞きますよ、こんな斡旋を請け負ってると特に。由緒正しい勇者や名のある傭兵がやっぱり信頼出来るって、そっちに依頼が集中してるらしいですし」
「もう行くの? 調査頑張って。出来ればウチをご贔屓になんてね、へへ」
「またのお越しをお待ちしています」
「貸し馬もやってるんで、良ければまた来てくれよ!」
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