第4話

「ソラ。それが、私の名前。」

「いや・・・だったかな?」


晴人は少し後悔に近い感情になっていた。人の名前を容姿でイメージした気持ちで決めてしまったからだ。自分達の名前を考えた親が決めるのに悩む気持ちをなんとなくだが理解できた。

そんな感じに悩んでいたが女王・・・いや、ソラは小さく自分の名前を呟きながら繰り返していた。


「ソラ・・・ソラ・・・。はい!私は、ソラ!!」


すると、ソラを中心に魔法陣の様なものが描き出されていった。始め晴人は驚いたが不思議と嫌な感じはせずむしろ、その光景が幻想的で綺麗で見惚れてしまった。陣が2人を中心として描かれるとソラが陣と同じ光を纏いながら少し浮いた。そして、何かを語り出したが晴人にはその言葉が何を言っているのかは分からなかった。自分が知っている言葉ではない言葉を紡いでいるソラを見つめていると光の粒子が現れ晴人とソラを繋ぐように繋がっていく。すると、晴人の中に何かを感じた。その正体はすぐに分かった。ソラである。ソラを晴人の中に感じた。それは、とても暖かく優しい感じであった。そんな感じを感じながら晴人は少しずつ意識が遠くなるのを感じながら目の前が真っ暗になった。








次に晴人が気が付いたのはまた知らない場所であった。周りを見ると薄暗い場所ではあるが灯りがあるので何も見えないわけではない。そして、自分の目の前に数人の男女がそれぞれの武器を構えながらその先にいる者に向けていた。


「黒の女王!そして、その契約者!これ以上は好きにさせない!」


彼らの先頭に立っている1人の青年が白銀に輝く剣を構えながら声を発した。そして今度は剣の方から声が聞こえた。


「もう止めてください。私達は貴方達と戦いたくありません。」


晴人はその剣が先代白の女王とその契約者であるとはっきりと理解した。何故そう出来たのかは分からないがそれだけはハッキリと分かった。


「無駄だよ。全てを破壊して支配する!それが、私達の・・・いや、私の野望なのでな!!!」


白銀の剣に相反するかの様な真っ黒な剣を持った男が答える。そして、彼の身体から漆黒の光。いや、全てを包み込む闇の様なものが吹き上げる。それを見た先代達は覚悟を決めてそれぞれ的に向かって駆け出していった。彼等がぶつかり合うのと同時に眩い光が放たれて晴人は眩しくて目を閉じた。


「お願い。あの子を・・・おねがい。」



光の中でそんな声が聞こえた。確認したかったが眩しすぎて誰が発したのかは分からなかった。





目を覚まして最初に映ったのは天井であった。身体を確認すると布団が上から被せられていたので自分がベッドにいる事を理解した。そして、横から寝息が聞こえてきたのでそちらを見ると。


「ス〜。ス〜。」


ソラがベッドの端に座りベッドに入らずそのまま寝てしまっていた。晴人は流石に風邪をひくと思いベッドから起き上がり薄い毛布の様な布を彼女の身体にそっと被せた。


「朝・・・か。」


カーテンを開けると朝日の眩しい光が部屋に入り込んだ。今は何時から分からないがまだ朝である事は太陽の位置を見て何となく理解した。自分の知る知識があっていればであるが。


「マス・・ター。」


すると、ソラが目を覚まして自分に布が掛けられていることに気付き礼を言った。そして、晴人に近づいてきて両手で晴人の顔を固定して自分の額と晴人の額を付けた。


「ちょっ!?」

「・・・熱はないですね。」


晴人は少し驚いたがソラは晴人の体調を確認するとすぐに離れた。目の前にソラの顔があったので晴人の頬は紅くなって胸が高揚した。


「良かったです。急に倒れられたので心配しました。」


どうやら、昨日の出来事の後気を失ってしまっていた様でソラがベッドまで運んでくれて寝かしてくれたみたいだ。ソラの話によると昨夜の出来事は契約の儀式であり人間と精霊の魂の一部をつなげる事で始めて精霊と契約した事になるらしい。


「マスターには私との契約の際に私が持っているこの世界の知識を刻みました。これで、ある程度の事なら大丈夫かと。」


精霊と契約する事は人にとっては体力をかなり消耗する事であるらしく更に自分は知識の事もあったので通常より多く消費してしまったらしく倒れたそうだ。晴人自身も確認したが把握出来てる部分だけではあるが特に問題はなかった。


「マスター。何か不具合はありましたか?」

「うん。特には・・・って、マスターって止めない?なんかこそばゆい。」

「???私はマスターの契約精霊ですのでマスターと呼ぶのは当たり前かと。」


ソラは何も不思議と思ってないらしく首を傾げていた。晴人もソラから与えられた知識でそう言ったのは普通である事は理解したが何となく嫌であった。だから、


「契約者とか契約精霊とかじゃなくて・・・友達として接していきたいんだ。だから、マスターじゃなくて名前で呼んでよ。」

「・・・じゃあ、晴人様で。」

「様なしで。晴人。」


ソラは呼び捨てに抵抗があるのか顔を紅くしながら何回か呼ぼうと試みてはいるがもう少しの所で出てこなかった。晴人はソラが名前を呼んでくれるのをじっと待っていると、


「は、晴・・・晴・・人。」


ようやく、小さくではあるが名前を呼んでもらえて嬉しくなり晴人は返事をした。

そして、佐久間晴人の新しい1日が始まった。












「晴人。準備はいいですか?」

「勿論だよ。ソラ。」


晴人がこの世界に来てから大体2ヶ月程の時間が経過した。晴人がこの世界にやってきてからこの日が来るまで激動な日々を過ごしていた。この世界の事や言語はソラとの契約で基礎知識として得る事が出来たが精霊を駆使する事。そして、必要なスキルを身につけなければならなかったのだ。

そして、晴人は現在エルクラスではなくエルクラスから離れた都市、ルーズヘルトにある一軒の家に住んでいる。この場所にやってきた理由は晴人はソラの契約者になった事でこの国の王となる資格を得た。しかし、晴人自身もそうだが今のソラでは女王としての権限はない状態ではあるがこのまま成長したら女王として覚醒し得る可能性はあるのでその契約者である晴人も自動的に国王としてならなければならない。なので、そうなる可能性も考慮してそうならなかった場合の晴人の将来の事を考えてルーズヘルトにある精霊を駆使する者達、精霊師を養成している学園に入学する事になった。そして、その日が今日である。


「晴人。ようやく、この日が来ましたね。」

「ああ。本当にキツかった・・・」


2人は歩きながらこの日までの事を思い出した。訓練に勉強。その繰り返しではあったが濃厚過ぎる日々は思い出すだけでも辛いものであった。

しかし、そのおかげである程度の事なら分かり出来るようにはなっていた。


「まあ、今日から学園だからあまり変わらないよな。それにあの人も居るし。」

「それは仕方ないですよ。あの方は晴人の保護者の様なものですしそれに・・・」


ふと風が吹き髪が乱れソラは会話の途中で止めて髪を抑えた。そして、目の前を見ると1つの建物が見えてきた。話し込んでいるうちに目的の場所についてしまっていたようだ。2人は一度顔を見合わせて微笑みそして、もう一度目の前の建物を見た。そこにあったのは、ルーズヘルトにある精霊師養成学園“セルフィル”である。

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いきなり異世界に飛ばされて王候補になってしまった少年の記録 あんちゃん @antiyan

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