俺❰拉致監禁❱

気づくと俺は視界を無くしていてた。

まぁ、実際の所、眼球を抉り出される様なグロ映像顔負けの状況だとかじゃなくて、単に

目隠しをされているだけなんだけど。

最初はビックリした。

気絶している間に首を変な方向に曲げて倒れていたのか、それとも記憶に新しい頭ドン!が原因なのか、首が至極痛くて気絶から気を取り戻し目を覚まし、重い瞼を開いたとたんこれだよ!暗黒というか漆黒というか、まるでこの世から光が無くなったとも思ったぜ(嘘です、少し盛りました)

まぁ、俺がされているのは目隠しだけでわなく、両手両足を太いロープで何重にも厳重に縛られていた。特殊な趣味の持ち主ならあえぎ声をあげて大歓迎するほど硬くきつく縛られている。力加減考えろよ!

今はパイプイスにでも座っているのか、パイプの冷たさが手や足に伝わってくる。

何も見えない上に、何も聞こえないこの悪環境は、孤独感と恐怖感がのそのそと後ろから襲ってきている様な感覚だ。

ここが何処なのか、何故こんなことになったのか、俺はどうにかしてこの状況を打開しようと様々な方法を試してみることにした。


打開策その1

「自力で拘束を解除する」


俺は俺の表情筋を限界まで動かしてみる、いわゆる変顔だ。そして、顔につけられた忌々しい目隠しを自力で外そうと試してみた。

結果から言おう。

失敗だ。

俺は完全に目隠しをなめていた。

どんだけ面白くきわどい変顔をしようと、それは目隠し様にはびくともしない。それに加えて俺の精神面は結構な消耗を得た。

なにをしてるんだ俺は。

とても人に見せられるものではない程の変顔は俺に急に羞恥心を与えてくるし、それに誰も反応してくれないなんて。

嘲笑っても、バカにしてもいいから誰か反応してくれよ!

手も、足も使えないこの状況はなかなか厳しいものだ。全く、どうするべきか。


打開策その2

「大声を出して助けを呼ぶ」


俺は、両手両足視界を拘束されているが、口と耳だけは何も手をつけられていなかった。しかし、口と耳さえ空いているとすれば、会話が出来る!この時俺は初めて人間の感覚というものに感動を得た。

とは言えこの束縛の甘さといい、少々不思議に思えたが、その事を俺はラッキーととらえることにした。

そして、大声で助けを呼ぼうとする。その瞬間、頭を嫌な予想が横切った。

まてよ、これは何かの罠なのでは?

俺は、初めて飛ぶ前の雛鳥のようにビクッとビビりがではじめた。ヤバイ怖いぞ。

だけど、ずっとこのままって訳にもいかないし……

数秒間だけ考えて決心した。

俺は深く息を吸い込んで、声を上げた。


「誰かいませんかーーーーーー!!」


………

反応無し。さっきまでの心配に声が引っ張られ、あまり全力で声を発することができなかったが、四方が近い壁に包まれてでもいるのか、音の反射で四方八方にも声が広がり結構な音量となったにも限らず、誰も何も反応してくれないのは、やはり恥ずかしく寂しいものだよ。泣きそうだよ!

はぁ、もうこれは使うしかないか。


打開策その3

「消す」


そう。消す。

能力を使うということだ。

俺の能力は、万物を消すことが出来る。ならばこの拘束具なんて、いとも簡単にほどける、否消滅できるだろう。

ここで注意すべきは二つある。

一つは左手につけられた黒い手袋を外さないといけないこと。

俺の手袋には色々と理由がありつけている。

決して中二病的な考えなどじゃない。

まぁ、正直カッコいいと思ってるし、似合っているとか考えることも多々あるが。

ぜ、絶対ちげーし!

もう一つは、絶対に拘束具以外を想像しないこと。

俺の能力は、所謂チートというものだ。だからか、ハンデというかこの能力には少し扱い面い所がある。まぁ、それはまたいつか話すよ。

とりあえず、俺の能力はその二つをクリアさえすれば大抵の標的物を原子を残さないほど抹消できる。

それは、生き物だって人だって同じことだ。だからこそ俺はこの能力が、この能力を使うことを嫌っている。

まぁ仕方なくだが、このおぞましき能力に頼るしかい方法がない場合に対しては、本当に仕方なくだが使わせてもらうしかない。

俺は右手を上手く使い、硬く縛られたロープにより限られた極少スペースを活用して、左手の黒い手袋を外そうとする。しかし、当たり前かのようにその手袋は外れる顔を見せることもなく、びっしりと左手にくっついている。

やっぱり無理か。

俺は深くため息を吐いて、仕方なくを理由にまずは手袋を消すことにする。


「はぁ……やるか」


意識を手袋に集中させて、左手に力を入れる。

そして、念じる。


「消えろ、消滅神王ムニキス!」


そういい放ったと同時に、黒い手袋は姿を消した。はぁ…結構気に入ってたんだけどな……仕方ない、買い換えるか。

それはそうと次はこのロープを消さなければ!

今度は左手を俺の腕を硬く縛る白いロープに触れて、そしてそのロープに意識を集中して。

念じる。


「二回目だが、消えろ、消滅神王ムニキス」


腕の締め付けられるような感覚は一気に消え去った。あの忌々しいロープは消えた。

俺は、すぐさま自由の身となった腕を使って目隠しを取る。地が止まっていたのか感覚が薄いなかで目隠しを取るのはなかなか困難なことだった。

目隠しを取り、瞼をおそるおそる開く。

そこは、暗く広い室内だった。

ここはどこだ?

何も無い殺風景な部屋の丁度真ん中に俺の座っていたパイプイスが堂々と置いてある。結構なキレイ好きがいるのか、ホコリ1つ無いほど清潔な空間でもある。そんな部屋だ。

俺は、足にも巻き付けられたロープを解放された手でほどき、イスから立ち上がる。

いったい何時間座らされていたのだろうか、腰が重い。これじゃ、ジジィじゃんかよ。そんなツッコミを入れつつ、俺は周囲をしっかりと確認する。

そしてわかったことがひとつあった。

この部屋には、部屋として大切かつ重要なあるものがなかった。

これでは、今の状況が矛盾してしまう。

そう、この部屋にないものとは……


「あれっ?ドアが無いんですけど……」


そう、ドアの無い部屋だった。

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