俺=到着?
そのあとの事を俺は覚えたくない。というか覚えていない。
何故ならというのも、俺は途中で気を失ってしまったのだ。
そもそも、俺はなんで気を失ったんだっけ?
俺が、燃え盛る車両を能力で消し飛ばした後、乗客らにバレて(まぁ証拠付けは俺なんだけど)それからは周りの皆から、「ありがとう」や、「素晴らしい」等と様々な感謝を受けた。正直、気分が良かった。
そして、車輪を止めた列車は再び動き始めた。
変わらず流れ行く風景、しかし周りからの対応は、事故前とは全然違うものだった。
そう、とにかくうるさい。一人一人が俺に感謝をしているのは良いんだけど、それを言葉にするし、しかもその数はざっと100人程って、そりゃうるさいわ!
そんな騒がしさの中、甲高いアナウンスが響きわたる。
「乗客の皆様へご連絡いたします、当機はまもなく停車駅に到着いたします……」
いつか聞いたようなアナウンスは、先程までの焦りを感じさせないほど冷静に列車内に響いた。
だが列車内の乗客のうるささはそれを上回り、アナウンスなど耳に入ってなどいないのだろう。ドンマイ、アナウンスの男の人。
とわいえ、何だかんだ安心した。手紙には、能力を使わないようにと記されていたけど、使ってもなにも起こらないじゃないか。
俺は周りの目を気にしながらイスに深くすわる。
それにしてもどうやってこの状況を抜け出そうか。考えに考えた結果、うん。逃げ切ろう!
ブレーキがかかり、電車が止まる。
サイレンがこれまで以上に大きく鳴り響き、皆の視線が俺からそれる。
その隙に、走る!
あれほど俺を注目の的にしていたのに、音にすぐに反応する。人間はこんなに単純明快な生き物でいいのだろうかと心配になってしまう。
それはともかく、走る。その姿を見た俺の信者達は(乗客は)もう一度、どうにかお礼を言いたいのか?それとも昼ごはんでも奢ってくれるのか?逃がすまいと、俺の後を追ってくる。
ここまでくると、しつこいレベルじゃなく、もう恐怖の域に達しているのがわかる。
俺は後ろを確認しようと振り替える。そして見えたのは目が完全に逝っている乗客の姿だった。しかし、それも4、5名で、先程まで俺の周りを囲んだ人たちとは、何か違うようにも感じた。ていうか、なんか怖い!俺がなんか酷いことした?逆に助けて上げたんだよ!何?電車でも弁償しろってこと?それは…無理です……すいません…
後ろに恐怖を感じ、急ぎ前を向いた。すると視界には、いつの間にか開いた両開きの自動ドアが入る。
あそこだ!俺は、もともといた3者両目に急ぎ戻る。
ドアを開く毎に、歓声が飛び交った。情報の伝達のスピードが至極速い!寄りかかってくる乗客を押し退けて後ろから未だに追ってくるしつこい4、5人から逃げ去るために急ぐ。
ドアを開き、またドアを開く。同じくうざったい光景と、後ろからのおぞましい視線は全く変わらなかった。しかし、3車両目への距離は確実に近くなっていた。
そして何度か繰り返し、やっとのことでこの車両、3車両目にたどり着いた。
すぐさま自分が仮眠を取った席へ向かい、席の上のロッカーに置いてある自分の荷物を引き出して、そのまま急いでドアへ向かう。多分忘れ物はしていないだろう。(そうであってくれ!と願うしかないのだが)
俺はドアへたどり着き、とっさに後ろを振り向く。
すると、先程まで5人程だったしつこいストーカーは数を増して、今では15人程に至っていた!バカじゃねーの!お前ら落ち着けって!
やはり、どのしつこいストーカーを見ても目がいかれていた。まるで、恐怖感が束になって襲ってきているようだ。
俺は、近づいてくるストーカーに追い付かれる前に電車から飛び出た。
これで助かる!と呑気に、この瞬間俺は思っているのだろう。
でも、それは本当に甘甘な思考で、世界はもっと苦いようで……
ガッッ!!
頭に強い衝撃が響く。
えっ?と、疑問が浮かび上がり、そして急激な痛みと脳震盪が俺を飲み込み、気分が悪く全身の毛穴が開き、鳥肌は引き剥がれそうなほど震えたっている。
ヤバい…これ…絶対にヤバイ……!!
どうきかして気を失わないように、歯を噛み締めて堪えるが、歯への力さえ徐々に抜けていく。
気が薄れていく中で、ついには冷たいアスファルトの地面へと仰向けに倒れこんでしまった。
倒れていく瞬間、俺の背後にたち今の悪状況の原因となる人物が霞行く視界に入った。
腰に刀をさした黒髪ロングの超絶美人な……女の子の姿が……
ドサッ。
俺は倒れ、気を失った。
頭の痛さだって感じないほどに。
このままどうなってしまうのだろうか。これからのイベントは無事ですむのか、というか、俺は生き延びれるのか?そう思いながら、瞼を閉じた。
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