俺=HERO?
俺の能力の効果。
それは、人知から極端であり、いわゆるチートってものだ。
その効果を簡単に言うと、なんでも消せるというものだ。そう、なんでもだ。
森羅万象、天地万物、諸事万端、気体、液体、個体関係なく、物体があってもなくても、全てを消し去ることができる。
そう、それがこの星、地球であってもそれは同じことが言える。つまり、俺はこの星ごと消せる力を持った存在ということだ。
俺は、この力で、大切な人を消した事実がある。
周りの乗客そして、とても注意深く勇敢な駅員は、口を開けたまま、アホ面を浮かべていた。
当たり前だ。
目の前で、あれほど脅威を指されていた原因となる、燃え盛る二車両が一瞬で消え去ったのだから。
何も動かず、誰も話さない、無音が響いた。
そして、気を取り戻した乗客達は、声を震えあげた。
「なんだよ今の!」
「お……俺達助かったのか?」
「おかぁさぁーーーん!!!」
人それぞれと言うべきか、様々な歓喜が地獄絵図を思わせるほど絶望的だった、列車内に飛び交う。
声量が大きすぎるせいで、少し耳が痛い。まぁ命が助かったのだから仕方のないことだろう。
俺だってそうするし。
一件落着し、脳内で周りの活気とは異なり寂しく独り言を呟いていると、1人、俺に声をかけた者がいた。
「あ……あなたは…何者なんですか!?」
そう、注意深い駅員さんだ。
注意深過ぎるのも、厄介だな。
というものの、俺へと、超都会の帝都からわざわざド田舎の西都へと届いた「強制的学校側推薦期待生徒」との、なんともおぞましく不可解なワードを載せたお手紙には、こうも記されていた。
「当学園で審査を受けるまで、外で派手な行為を行わないように注意深く……」
でも、これって派手な行為なのか?
そう思い、周りの状況を確認する。
騒ぎ立てる乗客ら、損傷が激しい車内、消滅した車両等々。
あ、これって絶対派手な行為なんだろうな……
俺は、手紙のメッセージ通りにバレないように、「私じゃないよ」オーラを出して、駅員の質問を無視して、この場を立ち去ろうとする。
だが、どうやら周りの目は俺を逃がさないようで…
「お…俺も見た!こいつが変な大声をあげた瞬間、丁度同じタイミングで車両が消えたのを!」
「わ、私も見たわ!」
「僕も見ました!」
etc.
本当、人間って話題転換が得意だよな!ついさっきまで自分のことでいっぱいだった頭をどうやったら俺に注目を向けられるのか、興味深く、やっぱり面倒臭いな。
とわいえ、俺はこの状況をどう切り抜ければいいのだろうか。
周囲からの視線は、手紙のメッセージによりプレッシャーがかけられ、ヒビの入ったハートには痛く沁みる。
俺は、いつかのように深く溜め息をつく。(溜め息をする毎に、幸せが逃げていくのであれば、俺は結局不幸に陥ってしまうのだろうか)
乗客皆の考えは見えている。
どうせ、俺が「お前達を助けた!」なんてカッコいい言葉を堂々と放って、そして、盛り上がりたい!もっと刺激が欲しい!そしてその刺激を当てる標的が欲しい!
単にそんな感じだろ。証拠として、期待の視線がキラキラと目からビームのように出ている。
普通なら、人気欲しさに堂々と胸を張って、事実を放つのだが、それが出来ないのは何とも不自由なものなのだな。初めて知った感覚に俺は戸惑いつつ、どうやってこの状況下を切り抜けるかを脳内で試行錯誤していく。
そして、切り開いた最後の選択肢を選んだ。
「えぇ、まぁ俺が消しました」
こうするしかないじゃん!無理じゃん!
俺の放った言葉をスイッチとするように、周囲の乗客は勢いよく盛り上がる。
「マジかよ!スゲー!」
「旦那!あんたは何者なんだい!?」
「うちの子を救ってくれてありがとう!」
あぁ!もう、うるさいな!
はぁ…怒られるのかな?憂鬱だな……
周りがハイの中、その中心人物である俺はロウの中で、1人寂しく落ち込んでいた。
だって!仕方ないじゃんかよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます