俺=車窓から変わる気持ち
ガッタン!
いきなり大きな振動が、硬い座席シートを通り越して、睡眠中の尻に伝わる。
正直痛い。
「フゥワァァァ……(あくび)一体なんだよ……」
その衝撃に体が驚き、俺はふと目覚める。
口の回りにはヨダレが垂れていて、こんな姿誰にも見せられないな。
自分の右手の長い裾で拭き取る。
そして、完全に目が覚めてしまい、睡眠に当てる予定だったこの自由で退屈な時間をどう越そうかと考えながら視線を窓に移す。すると、窓から鋭く刺す太陽の光に目を焦がす。
そのきっかけを気に俺は外の、車窓からの光景を眺め、鑑賞することにした。
壁から突き出ているテーブルに膝をつけ、カッコよく顎に手を当ててポーズを取る。まぁ、こんなときぐらいカッコ付けてもいいだろ。
そのまま俺は車窓からの光景を大人しく鑑賞する。
窓から見えるのは、ウザいほどに輝く太陽と、その光を滑らかに乱反射する細く何本も繋がっている川、そして恐ろしいほどに緑々しく、ずっしりとした巨大な重量感を感じさせる山々。
目の前に広がるのは、「大自然」なんてワードがぴったりな光景だった。
世界が滅亡しかけ、電気や有害物質が綺麗さっぱり無くなった世界では、タイミングを見計らったかのように、森や、木花、野菜からつたや雑草まで、ありとあらゆる植物らが命を謳歌し、みるみる成長していった。
世界的人口が、黒霧現象前の4分の1という、絶望的状況の中、そんな町や村を侵略していく植物は生き残る為の食料として必須だった!
つまり、弱体化し、絶望から立ち直れなかった人類を全面的に最初に助け、救ったのは植物ということだ。否、植物様だ!
だからか、完全復活した世界は恩を返すかのように、植物を無駄な処分や、私利私欲の扱いを禁じた。
多分、宇宙から地球を見たら、ほとんどが海の青と、草木の緑がほとんどだろう。
それはそうと、草木が生え盛るとなると当然、奴等も生え盛るのんだよな…はぁー、最悪だ!
まぁ、その話はまた今度にしよう。
車窓からの光景は、どんどん後ろへと遠ざかっていく。
そして、山と山の間から垣間見えてくる。
大自然の近場とは思えないほどの、人気の盛る大都市、帝都サンクチュアリーが。
その証拠に、帝都サンクチュアリーのシンボルと言える建物が見える。
その建物は、帝都を王様やそれに連なる王族の人々が住むらしく、城壁は白銀でできていて物凄く優雅で美しく、それはそれは輝かしい!
帝都は、百年前の黒霧現象以来、日本が、東都、西都、南都、北都そして帝都の五つの都市に分けられまたその五つの都市の中でも、帝都は一番の大都市で、経済は発展していて、それに安全で広大な土地がある。
話が変わるが、日本はいつの間にか、経済が誰かの手によって私物化されているようにも感じる。
だけど、普通なら表側は輝かしいが裏腹はどす黒いのが落ちの王族だが、この帝都サンクチュアリーの王族は良い噂しか耳にしない。何やら国民に最も近く、金欲に疎いらしい。その噂を、他人からの口が流したのか?それとも自らの口で強制的に広ませたのか?それを考えるのはよそう。
気が悪くなる。
そして俺はこれから帝都サンクチュアリーで立派な偽善者…じゃなくて、立派なスレイヤーズになるために、スレイヤーズ育成学校へと向かっているのだ。(あれ?これってどっかで話したっけな?)
そもそも、スレイヤーズってのは強い能力や、強靭な肉体とそれらを活かした体術や武術等々、多彩な才能に恵まれた人々しかたどり着けないエリートな職業、つまり、そんなエリートになれる保証付きのスレイヤーズ育成学校に、入れること事態すでにエリート街道まっしぐらなのだよ。
そんな所は俺にとって場違いにも程がある!
体格も華奢だし、体術?武術?ケンカとかしたことねーし!
育成学校に入る理由といわれれば、能力しか取り柄が無い。
そもそも、それなのに俺は何で編入学することになったのかというと、一昨日ほどに家のポストに入っていたこの手紙が原因だ。
これまで見たことも触ったこともない上質な厚紙には、こう書かれていた。
「|無神奏(むがみかなで)、お前を強制的学校側推薦期待生徒として、学園に迎えることを記す。」
そうでかでかと書かれていて、その下に色々と説明を書かれていた。(なんか男性初のなんとかとか、ランクがそうとかどうとか、てか強制的ってなんだよ、怖すぎだろ…)
五つの都市の中でも最も田舎な俺の住む西都アクチュアリーにまでそんな手紙が送られるなんて、俺はそんなに期待されているだろうか?何も出来ないのに。
全くもって、本当にメンドーだ。
何故なら、スレイヤーズは色々とお得で美味しい職業だが、その代償として命をかけなければならない。
魔属と戦う。それは命を落とすことに最も近いことだろう。(あれ?これもどっかで話したっけな?まぁいいや)
俺は、遠くを、帝都サンクチュアリーを眺めながら、深いため息を吐く。
「はぁ……、ホント、楽しみだよ……」
俺のテンションは少しずつ下がり、電車は煙を立ててどんどん前に進んでいく。
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