俺=夢の中
突如現れた、摩訶不思議な力が使える者は、確率的に言えば、1億人に1人の存在だった。
初めて認識された能力者の能力はそこまで派手なものでもなく、単に体温を10度ほど上げれるや、ちょっとした火起こしに適量な火の粉を産み出せる等々、ド派手とは程遠いものだった。
だが、それから徐々に能力者は増えていき、それと共に能力は力を付けていった。
80年前、能力者確率8000万人に1人、目立った能力、3センチ程浮ける。
50年前、能力者確率4000万人に1人、目立った能力、コップ1杯分の水を操れる。
30年前、能力者確率1800万人に1人、目立った能力、バイク並みに速く走れる。
15年前、能力者確率600万人に1人、目立った能力、1トン程の岩を手を触れずに浮かせられる。所謂サイコキネシス。
10年前、能力者確率400万人に1人、目立った能力、一定時間空を飛べる。
5年前、能力者確率250万人に1人、目立った能力、小町を驚かせるほどの停電を起こらせられる。等々。
人数も、色も少しずつだが大きくなっている。
この情報から解るように、世界人口は徐々に増えていき、暮らしにもゆとりが出来たと見える。
そう、人間は能力を活用して、驚くべきことにたった100何年かで、黒霧現象以前の、否、能力という未だ未知の新しい力を含めて、人類は大きな進歩と近未来な生活を得た。
そして、現在。
能力者確率100万人に1人、そして、その1人にどうやら俺は選ばれたみたいだ。
(はぁ、面倒くさい)
そう、面倒くさい!
能力とは、若者の中二病特有の香りがするものだが、現実を見てみると、そんなご都合主義には行かないのだ。
その理由は、なんといっても、度々現れる黒霧が原因だ。
今から約100年前の黒霧現象以来、世界各国で、引き続き黒霧現象は起こった。まぁ、100年前の大災害とは違い、被害者も規模も小さくなっていて、それに加え直ぐに収まる。(結局、一年に数回程出現するのだが)
だが、100年前の黒霧同様、人類をここまで堕とさせた原因である化け物、魔属も出現する。(黒霧の規模が小さいからか出現する魔属も数少ないのは不幸中の幸いというべきだろう)
その為、今はその度々現れる黒霧と魔属から人類を守るために、彼らに抵抗するのに効果的な力を、能力を持つ能力者が一種の職業スレイヤーズとして働いていた。
そして、ただ今現在進行形で俺が向かっているのは、そんな能力者を育成する学校、名を……あれ?なんだっけ?まぁいいや。
だからこそ俺は憂鬱なんだ。
この学校に入れば最終的に、完璧なスレイヤーズの完成だ。
卒業後は直ぐさまスレイヤーズとして、迫り来る魔属を倒し、人類を守るヒーローとなれる。
冗談じゃない!
俺はそんな強くない!
体も、心も、能力も……
そう、能力。
俺の人生を丸ごと全て狂わされた原因。
そして、俺の家族を、お姉ちゃんを消した能力……
俺はそんな能力を「活用」するために学校に行くのではない。
俺は、そんな忌々しいこの能力を「無くす」ために学校に行くのだ。
この、何もかもを消し去る能力を!
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