第2話 地上にひとり

 ――あ!

 お星さまの声だ!


 空から落ちてくる雨粒と共に、落ち着きのある声が聞こえてくる。


 それは、わたしには全くわからないような難しい数字や外国語の羅列だったり、優しい歌声だったり、誰かを懐かしんでいるような囁き声だったりと、いつも違う内容だった。


 暖かい陽の光を遮る雨雲の向こうから、その声は降ってきた。


 よく晴れた日の夜に、多分あの声の主だという光を見たことがあった。


 点滅しながらゆっくりとわたしの頭上を通過していく、星のような光を見て、あの声が遠く遠く、宇宙から降ってきているのだと、わたしは確信した。 


 ずっとずうっと前。わたしには話し相手がいた。

 周りの花や木や虫たちは、話していることはいつもあんまり変わらないし、みんな退屈な独り言みたいなことしか言わない。


 あの頃から、わたしの話相手はもっぱら人間だった。


 その人間たちがいなくなって、どのくらい経つんだろう。


 ここはかつて植物園だった。

 研究員や事務員、清掃員……以前はたくさんの人間がいた。

 今は跡形もなく風化し、崩れ、その残骸も数多の植物たちに覆われている。


 話し相手がいなくなったここは、本当に退屈だった。


 宇宙から、あのお星さまが声を降らせてくれるまでは。

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