第4話 えいが
ケイタは恋人のマユミに付き合って夏に着る服を選んでいた。
「こっちとこっちのシャツ、どっちがいい?」
「うーん、マユミはやっぱりこの水色かな」
「でしょう?じゃあ、これ買ってくる」
レジに向かう彼女の背中を見ながら、相手が好きそうな服をほめてあげるのは大変だとケイタは思った。
この前は適当に返事していたら怒って本当に帰ってしまったし。
今日は正しい答えを選べたようだ。
デパートの外に出ると、日差しがまぶしい。
街を歩く人はどこか楽しそうだ。
マユミがケイタの腕を組みながら聞いた。
「この後行きたい映画があるんだけど」
「いいよ。この前言っていた〇〇でしょ」
「覚えていてくれたんだ」
マユミがニコッと笑った。
全国的に有名な監督が撮った恋愛映画とかで、若者の間で人気らしい。
「もちろん覚えているよ。じゃあ、行こう」
映画館はカップルでいっぱいだった。
かく言うケイタたちもその一組だ。
「ポップコーンでいい?」とマユミが聞いた。
「うん、ありがとう」
上映が始まるまで、2人でポップコーンを食べながら待った。
映画は面白かったのだけれど、急な睡魔が襲ってきた。
ケイタは開始20分ぐらいで寝てしまった。
ふと気が付くとエンディングロールで、隣のマユミはハンカチで目頭を押さえながら時折鼻をすすっている。
しまった、とケイタは思った。
映画が終わり、みんながぞろぞろと外に出ていく。
ケイタが話しかけた。
「いい映画だったね」
「うそ、途中寝ていたくせに」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね」
「じゃあどういうわけ?」
また、マユミを怒らせてしまった。
「ごめんね」とケイタは謝ったが返ってきた返事は意外なものだった。
「私、心配しているのよ」
「何を?」
「なんだか最近疲れているみたいで。仕事大変なの?」
怒られるのかと思ったら、逆に心配されてしまった。
「いや、全然。納期が迫っているのがあるから、家にはあまり帰れてないけど」
「なんだか最近のケイタおかしいよ。今日はもう帰ろう」
そういってケイタとシオリは一番最後に席を立った。
後ろに座っていた少女を除いて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます