22話:そして世界は終わる。
それはともかくとして、レイアの質問に答えようと空を見上げる。
コツと言われても、アスティルの式はそこまで複雑でもない。少々発動条件が必要ではあるが。
――あ、もしかして苦手な理由って、大きさが安定しないとかそんな感じ?
――よくわかったわね。
――あの式、水を構築する式が入ってないから、空気中の水分量に左右されるんだよ。
――……あー、なるほどね。
思い当たる節があったようで、レイアは納得したような声を出した。
――それなら先生に一度水を撒いてもらえばいいのね。
――そうそう。
それならやってみるわ。と返ってきたところでレイアの番になった。
緊張した面持ちで教師のところに行くレイアを見送り、そういえばどうして氷が使えることに気付かれたのか訊き忘れていたことに思い至る。
またあとで訊けばいいか。
そう、思っていた。
見上げた晴天の空が、ひび割れるのを見るまでは。
「なん、だ」
あれ。
その一言は、音にならなかった。
同時刻。
<躍る牡羊亭>にいたユウキは空を見上げて舌打ちをした。
「ここも分岐世界なんか! 正史はどこやねん!!」
すべてが消える直前、彼は姿を消した。
治安部隊にいたディスティアもまた、異常事態に気付いて悲しげにため息をついた。
「この世界だと、思ったんだがな……」
夫がかつていた世界だと思っていたのだが。
音も無く消えて行く世界の中、彼女も姿を消した。
そしてこの日、一つの世界が無に呑まれた。
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