泣くのか人間



 ぬぬぴを殺人鬼にするのはやめようと決意した。須藤も成塚も他の人たちも、殺したのはわたしたちだ。ぬぬぴではない。

「ううん、彼らを手にかけたのは私だよ」

 彼女はそう言って触手を振るけど、本当にそうではない。人体をたやすく裂く爪や歯、テトロドトキシンてきな毒を分泌する毛穴があるとはいえ、彼女は自然とぬいぐるみを愛する、どこにでもいるような哺乳類だ。適当な理由や証拠をでっちあげられ、怪物のように扱われるいわれなどない。

「でもこれでいいの。私はぬぬぴだから」

 そんな、待って。違うんだって。ぬぬぴの家の前にやってきた回収車が彼女を連行するのを、ただ黙って見つめる。わたしたちはぬぬぴではない。死ぬのは、こわい。




(お題……『隠す』 本文300文字)





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