たそがれのみ


 体が睡眠そのものになってしまって、休日はまったく動けない。やりたいことがあったはずなのに、それは手つかずのままで積み上がっていく。

 今週も例に漏れず、気がつくと外は朱に染まっていた。なんとか取り返さなくてはという想いにかられ、冷蔵庫に入っていた発泡酒と共に公園へと向かう。ベンチに座り、缶の中身をあおる。ゆるいテンポの音楽をかける。道中で購入したチーズとカルパスをつまむ。どこかで見た行為をなぞり、なにかをなしとげたふりをする。

 また、終わってしまった。オレンジ色をしたからっぽの公園に、つぶやきがむなしく落ちる。太陽が少しずつ裏側へと昇っていく。ここを見限り、すばらしい誰かがいるところへ消えていく。




(お題……『夕』 本文299文字)

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