前途



 皆で最後の定期試験に向け勉強会をしていたら、いつの間にかいちばん赤点が多いリンをトイレに閉じ込める流れになっていた。私たちは笑い合いながら彼女を個室にぎゅっと押し込み鍵をかける。リミがしているバイトの数。サユのお兄さんが自殺をした理由。ナツコと今の父親の関係性。喫茶店だった私の家が店じまいしたのはなぜか。文化祭や体育祭がなくなったわけ。私たちの質問すべてにリンは答えていたが、いつしかそれはぱたりと途切れてしまった。私たちは慌ててドアを蹴破る。リンはそこにおらず、代わりに床で一輪の白い椿が咲いていた。うらやましい。誰かの声がする。壁に設けられた小窓の外では、桜の枝先が静かに膨らみ始めていた。






(お題……『答える』 本文298文字)

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