前途
皆で最後の定期試験に向け勉強会をしていたら、いつの間にかいちばん赤点が多いリンをトイレに閉じ込める流れになっていた。私たちは笑い合いながら彼女を個室にぎゅっと押し込み鍵をかける。リミがしているバイトの数。サユのお兄さんが自殺をした理由。ナツコと今の父親の関係性。喫茶店だった私の家が店じまいしたのはなぜか。文化祭や体育祭がなくなったわけ。私たちの質問すべてにリンは答えていたが、いつしかそれはぱたりと途切れてしまった。私たちは慌ててドアを蹴破る。リンはそこにおらず、代わりに床で一輪の白い椿が咲いていた。うらやましい。誰かの声がする。壁に設けられた小窓の外では、桜の枝先が静かに膨らみ始めていた。
(お題……『答える』 本文298文字)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます