花柄

 リホが左頬、右手の薬指、鎖骨を順繰りに押すと花柄の風呂敷に包まれたお弁当箱に変わるというのは私の中では有名な話だったけど、他の皆は誰も知らなかった。友達がいないから。

 昼休み、校舎裏で私はリホの食事が終わるのを涎を口にためながらじっと待つ。やがてリホが箸を置くと、私は彼女をお弁当箱に変える。きれいな包みを解き、蓋を開ける。唐揚げやグラタン、ごま塩ご飯などが私を見上げた。今日が月曜だから、二日ぶりの食事となる。

「用意しといたよ」

 無心でそれを口に運んでいると、リホが脳内に直接ささやいてきた。箱の隅、バランで厳重に隔離されたフグの内臓を眺め、私は自分の痩せた体の皮膚に浮かぶ、無数の汚い痣のことを思った。



(お題……『包む』 本文300文字)

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