給食の時間

 牧辺が死んだと聞いて、私と兄はたまらず家を飛び出した。こんな時間にどこへ、と親の声を背に受けるが、足は止まらない。夜の濃い闇を裂きながらコンビニへ辿り着くと、あるだけのプリンをかごに詰め込む。

 会計を済ませたプリンの袋は兄が持った。そのまま歩いて公園へ行くと、私たちはブランコに腰かけてひたすらそれを腹に収めた。双子の私たちは、好物も嫌いなものも同じだった。

「死んだね」

「死んだな」

 ただただ、スプーンを動かす。小学生だったころ、ピーマンが食べれないばかりにおあずけをくらった幸福の象徴を、残した給食と見つめあった時間と共に消費していく。

 牧辺は、私たちの担任だった。今日の朝、車に轢かれて、無惨に死んだ。



(お題……『祝う』 本文300文字)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る