しそこねた

 俺の住んでいる部屋は窓の建てつけが悪く、一センチぐらいの隙間が必ずあいてしまう。激しい雪が降った日なんかは、そこから吹き込んだ雪により小さな白い塊ができる。鼠に似た形になるのでユキちゃんと名づけかわいがっていた。

「窓直しなよ。寝るとき布団が暖かくても、吸い込む部屋の空気が超冷えてたら凍死するらしいよ」

 だがある日、家に来た彼女にそう言われてそれはそれで怖いなと思い、俺はその日のうちに大家へ業者を呼ぶよう頼んだ。結果、かわいらしい雪塊は姿を消した。

 それからというもの、朝起きると窓の外に凍った鼠が落ちていることが増えた。あんぐりと口が開いている。彼女が携帯で見せてきた俺の寝顔と、それはよく似ていた。



(お題……『雪』 本文300字)

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