薬局にて


「ゴンゴン牧様」「はい」「伊藤太郎様」

 明瞭な意識の中、名前が呼ばれたので受付へと向かった。小難しい説明がなされた後、カウンターにごとりと拳銃が置かれる。事前に希望しておいたので、色は黒だった。

「これでよくなりますか」

「べらぼうに」

 受付で働いている薬剤師たちは笑顔。テレビに写る芸能人は笑顔。外を歩くカップルは笑顔。平日の昼間は平和に満ちていた。

「やっと、治るのね」

 後方の椅子で待機していた母親が進み出て、防護服のまま僕を抱きしめてくれた。父親がマスク越しの涙を見せ、妹が手袋をはめた愛らしいてのひらで僕の手を握った。

「お大事に」

 柔らかい平和が頭の中に流れ込むのがわかる。僕は引き金を引いた。



(お題……『薬』 本文295文字)

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