ランプみたいに

「意味不明です」

 罰として瓶ビールを一気飲みさせられた啓は赤い顔でそう言った。視線の先には笑顔を浮かべる佳奈先輩の姿がある。あちらが浮気したのだと僕は聞いていたが、周りの人間はとっくに買収されていた。

「俺のほうが浮気してた、なんて」

 顔を真っ赤にした男が啓に詰め寄ってくる。もう怒ってないから。先輩がふっと笑うと、放散された怒りは盾のように彼女の元へ集まった。啓は何も言えず唇を噛んでいる。

「グラス空だ、きみ注いで」

 先輩が僕の隣ににじり寄ってくる。その瞳は嫌な磁力を帯びていた。無視してビールを注ぐ。こいつの腹の中のアルコールが残らず燃えれば、少しは綺麗になるのに。ビールの泡を見て、僕は唇を噛む。



(お題……『灯す』 本文297文字)

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