いぬのいろをしたあげもの
学校から帰ると、私は引きこもりの姉の部屋を掃除することになっていた。脂肪の塊と化した彼女が、床を這いずったぬるつく跡を洗い流すためだ。
それが済むと、私は台所までおやつを取りにいく。姉の名前だけを愛おしそうに口にして、母が犬のような色をしたドーナツをいくつも押しつける。私の分はない。
部屋に戻ると、姉はベッドの上から移動していた。せっかく掃除した床に、いくつも脂のすじが走っている。
脂の塊めがけ、思い切りドーナツを投げつける。表面に無数の口が開き、ひとつ残らず彼女はドーナツを受け止めた。
「いつになったら学校戻るのよ」
姉は答えない。粘つく咀嚼音が、壁にかかった時計の音と重なっていく。
(お題……『食べる』 本文291文字)
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