第七 グンニーの部

グンニーの名詞の篇(v3-0344~v3-0380)

v3-0344


بسم الله الرحمن الرحيم


グンニーの篇


二字の名詞の章


 マフムード曰く、グンニーは次の両種から成る。「ج ― ch」を帯びた物と「ك ― g」を帯びた物である。殊に各語彙を全て此の両種に分ける。ある物は語中に現れ、ある物は語尾に現れる。

 以下に主な物を抜粋して叙述する。


بنك böng 愚か、間抜け、とろい。「بنك كشي böng kshi」間抜けな奴。此の言葉は「شبنك shäbäng 鉄杖」の短縮形である。

بنك bong ドン(擬音語)。「بنك اتي bong ätti」ドンと鳴った。重い物が落ちた時に発する音。


v3-0345

بنك bang ワーワー、ギャーギャー。「اغلان بنك سغتادي oghlan bang sightadi」子供がギャーギャー泣いた。

تنك täng 同じ、等しい。「تنك توش täng tush 同輩、同い年の人」も此の言葉に由来する。

تنك täng 見込み、機会、時機、場所。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  تنكسزدا تكرمان ترغرسا يرغسزدا يار برير

  tängsizdä tägirmän turghursa yaraghsizda yar barir

 相応しくない所に粉轢小屋を建てれば、思いがけない時に友は去る。ある人が、粉轢小屋を然るべき所に建てない、或いは不当な所に建てた場合、思いがけない時に堤が破れてしまう。此の言葉は物事を時宜に適って行いない人を指して言う。

تنك tang 篩。エールグー語。

تنك tang 奇怪な、奇異な。「تنك نانك tang näng」奇怪な物。「تانك كردم tang kördüm 我は奇怪な物を見た」と言うのも此れに由来する。

تنك tang 黎明、払暁。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  تنك اتا يرتلم

  tang ata yortalim

  بذرج قنن ارتلم

  budhruch qanin irtälim

  بسمل بكن ارتلم

  basmil bägin örtälim

  امدي يكت يؤلسن

  ämdi yigit yävülsün

 夜が明けて我々は出立した。我々はブズラチュ・カン(ヤバークー人で、殺された。)の命を受け、此の仇討の為に、我々はバスミルのベグを焼き殺すべく、今若者たちが集めようとしている。「تنك اتي tang atti」暁を払った、夜が明けた。


v3-0346

تنك tong トン(擬音語)。「تنك تنك اتي tong tong ätti」トントン鳴った。これは重たい物が一塊の物の上に落ちた時、発する音である。

تنك tong 中身の詰まった。「تنك نانك tong näng」中身の詰まった物、即ち中身が空洞では無い物。中身の詰まった葦のことを「تنك قمش tong qamish」と言う。これは中身が空出ない葦のことである。

تنك tong 凍った。あらゆる凍った物。「تنك ات tong ät」凍った肉、寒冷なために凍ってしまった肉。その他にも用いる。


v3-0347

تنك tang 廃墟、遺跡。古代の建築が倒壊したまま残った遺跡。例えば、古遺跡の痕跡が有るような丘等。

تنك ting 真っ直ぐ、垂直な。「ار تنك تردي är ting turdi」人が真っ直ぐ立った。

جنك chang 竪琴。弦楽器。

جنك chung 肉を削ぎ落とした骨。「جنك ات chung ät」骨から削ぎ落とした肉。

جنك ching チン(擬音語)。「قلاقم جنك اتي qulaqim ching ätti」我が耳にチンと響いた。鈴や陶器の類が発する音を此の様に言う。・・・省略・・・。

جنك ching 満ちた、満々。「جنك تلو كول ching tolu köl」満々と満ちた湖沼。あらゆる物が極限まで満ちてることを「جنك تلو ching tolu」と言う。

دنك dang ダンダン。「دنك دنك اتي نانك dang dung ätti näng」ダンダンと鳴った物、即ちダンダンと言う音が響いた。此の言葉は「تنك تنك اتي tang tung ätti」と同じで、「タントンと音がした」と言えるのである。


v3-0348

سنك sang 糞。「قش سنكي qush sangi」鳥の糞。

سنك song ある人の子孫たち、後裔。

سنك song 後ろ。「سن منك سنكدا كل sän mäning songda käl」お前は俺の後ろに来い、お前は俺に付いてこい。

سنك song 後ろ、裏。物事や事情の背景。「بو سوز سنكندا ايغل bu söz songinda ayghil」この言葉の裏を語りたまえ。

سنك sing シン。「قلاقم سنك اتي qulaqim sing ätti」我が耳にシンと響いた。「كمنجا سنك اتي küminchä sing ätti」蚊がシンと鳴った。

قنك qang ガーガー。「قاز قنك اتي qaz qang ätti 」鵞鳥がガーガー鳴いた。これは、あらゆる物が発する音声を真似する言葉の呼称である。

قنك qung 筋肉。「قنك ات qung ät」筋肉、骨から削いだ肉。

كنك küng 小間使い、婢女。

كنك käng 広い。あらゆる広い物を「كنك نانك käng näng」と言う。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  كنك تون ابراماس كنكاشلك بلك ارتاماس

  käng ton upramas kängäshlig bilik artamas

 緩い服は磨り減らず、話し合いは物事を破らず。緩やかな服は破れず、話し合ってる間は物事は破断しない。この諺は、何かあった時は他人に相談し、独り善がりに成らない様に勧めている。


v3-0349

منك mäng 鳥の餌、餌。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  قش توزقا منك اجن النور

  qush tuyaqqa mäng üchün ilinür

 鳥は穴に餌の為に落ちる。この諺は、食べる為に困窮に陥った人を指して言う。

منك mäng 黒子。詩歌では此の様に用いる。

  بيزنك منكا سوزكيا

  bäring manga sözkiyä

  منك لك قرا تزقيا

  mänlig qara tuzqiya

  يلؤن تتار كزكيا

  yälvin tutar közkiyä

  منكم منك بلكا

  mingum mäning bilingä

 君よ諾と言ってくれ、黒い黒子を持ち、人を惑わす瞳で人を虜にする甘美な美女よ、君は知るべきだ、私は愛の為なら、どんな苦難や悲哀も受け入れることを。


v3-0350

منك mung 智慧。「منك تاغ mung tagh」親知らず。「منك تاغ اندي mung tagh ündi」親知らずが伸びた。

منك mung 憂い、悲しみ、困難。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  اركا منك تكير تاغ سنكرينكا ييل تكير

  ärgä mung tägir tagh sängiringä yäl tägir

 憂うる人は、山の背に風を招く。山の尾根に風を招くことは、人が艱難辛苦に見舞われる様なものだ。風が尾根に吹き荒んでも、山の尾根は其の儘であるから、人も艱難辛苦を乗り越えることが出来る。

منك ming 千。数字の千。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  بيرن بيرن منك بلور تما تما كل بلور

  birin birin ming bolur tama tama köl bolur

 一つ一つは千に成り、一滴一滴は湖に成る。この諺、例え少なくても、一つの物でも受け取るべきである、と人に諭している。

ننك näng 物。「بو نا نانك ال bu nä näng ol」これは何なのかよ?

ننك näng 荷物、財物、財産。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  بلمش ننكك سؤسن

  bulmish nänging sävärsän

  اقرن انكر سؤنكل

  aqrun angr sävingil

  برمش ننكك سقنما

  barmish nänging saqinma

  ازراق انكر اكتكل

  azraq angar öküngil

 お前はお宝を手に入れて喜んでいる、だが喜んではならない、喜ぶには及ばない、何故ならば、お宝は何れお前の手から失われるからである。もし財物をお前の手から失っても、悲しむ莫れ、ただ少し惜しむだけで好い。何故ならば、悲しんでも財物は戻ってこないからである。


v3-0352


本章中のミサッラル


ينك yang 型、形、モデル。あらゆる物の型、其れに基づいて量って作る。「برك ينكي börk yang」帽子の型。それは此の様である。型紙を翼状に作って三角形にしてから、切り取る。或いは粘土を丸いナンの様な形にして型を作る。帽子用の布を其れで量ってから裁断する。あらゆる物の型は此の様である。

ينك yung 肺の周りの肉。女たちは食べるが、男は食べない。

ينك yung 毛。駱駝或いは羊の毛。

ينك yung 棉花。エールグー語。ヤグマーとカルルク語でも此の様である。

ينك yäng 袖、衣服の袖。

ينك ying 鼻水。


二字の名詞の章は完


v3-0353


فَعَلْ fääl,فَعُلْ fäul,فَعِلْ fäil 型で中間に各種動符を帯びた語彙の章


تنكت tangut タングト。これはテュルクの部族の一つ。彼らは秦に隣接して居住する。彼らはアラブの血統を自称している。

كنكت kingüt キンギュト。回鶻辺境の一城市名。

سنكت singüt 代価としての礼物。「بو ات منكا سنكت بيردي bu at mang singüt bärdi」この馬を我に礼としてくれた。

تنكر tüngüt 姻族。女方の兄弟、父母などを指す。

سنكر sängir 山の背、尾根。壁の天辺なども此の様に言う。

سنكر singir 筋。

قنكر qongur 声が枯れている、しゃがれている。「قنكر اون qongur ün」枯れた声。

قنكر qongur 茶褐色、トビ色。「قنكر قوى qongur qoy」トビ色の羊。この種の色のあらゆるものについて言う。


v3-0354

قنكر qingir 歪んだ、藪睨み。「قنكر ار qingir är」ガチャ目の人。両目が歪んだ人の事を「اكي كوزي قنكر iki közi qingir」と言う。

منكر mungar これと比べて。「من منكر ايدم män mungar aydim」我は比べて話した。これは目の前に居る人に対して示す意味である。

منكر mingar 泉。オグズ語。

تنكز tängiz 海。

تنكز tonguz 豚。

تنكز tonguz 豚、亥。十二支の一つ。

قنكز qonguz 甲虫、屁を放つ甲虫。

كنكز küngüz 家畜の糞、肥料。廃墟で糞尿を混ぜて固めて作った肥料。

منكز mängiz 頬、人の頬。「قزل منكزلك qizil mängizlig 紅い頬」も此れに由来する。此の言葉は主に頬が紅くなった時に言う。

منكز müngüz 角、犄角。あらゆる獣の角。

منكز müngüz 「منكز منكز müngüz müngüz 角角」。子供たちの遊び。次に様である。子供たちが川辺で一列に座り、湿った砂で足を半分覆い、その後、手で砂を払う。その中の一人の子が「منكز منكز müngüz müngüz つのつの」言う。その他の子たちが「نا منكز nä müngüz 何の角」と一斉に問いかけ、その中の子が続けて角を持った動物を挙げ、その他の子達が皆で復唱する。そのうち、駱駝や驢馬などの角の無い動物の名を挙がるようになる。それを言った子供に吊られて角の無い動物の名を復唱した子は、水の中に押し込まれる。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  سسكان اوذقا تنكري منكز بيرماس

  süsägän udhqa tängri müngüz bärmäs

 触れたいものに神は角を与えず。この諺は人々に害を齎す者について言っている。其の様にして事を起こせない様にするのである。


v3-0355

كنكس kängäs 浅い。「كنكس سوؤ kängäs suv 浅い水」。容易いことを此の様に言う。

سنكش süngish 戦い、白兵、攻め込み。

سنكش süngish スュンギシュ。男の名。

كنكش kängäsh 話し合い、相談。

منكغ mangigh 足取り、歩幅。「انك منكغي كور aning mangigh kör」彼の足取りを見ろ。

تنكق tanguq 国王が出游時、或いはある場所に行った時に与える礼物、金銭。飲食や布地や衣服なども含まれる。

تنكق tanguq 打毬で遊ぶ時、引いた球が線を越えた人に与えられる布きれ。

تنكق tanguq 戦争中、矛や旗の先を飾る布きれ。

سنكق singuq 切れた、壊れた。「سنكق نانك singuq näng」壊れ物。オグズ人は此れにグンニーを帯びず「سنق sinuq」の形で使う。これらは規則に合っている。何故ならば、これは「سندي sindi 断つ」という動詞からの派生だからである。この動詞には「نك ― ng」は無い。


v3-0356

تنكل tängil 「تنكل كيك tängil käyik」前脚に縞模様のある鹿。他にも用いる。

جنكل chingil 「جنكل جنكل chingil chingil」チンギルチンギル。「يكون جنكل اتي yügün chingil chingil ätti」馬銜がチンギルチンギルと響いた。

سنكيل singil 妹。

كنكل köngül 心、賢い、用心深い。怜悧な人の事を「كنكلك ار köngülüg är」と言うのは、此れに由来する。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  كوزدن يراسا كنكل دن يما يرار

  közdän yirasa köngüldän yänä yirar

 眼から離れれば、心からもまた離れる。即ち、もし友が眼から疎遠になれば、心も変わってしまう。「كنكانك نتك könglüng nätäg」お前の心はどうだ?


本章中のムザッワーフの語彙


تنكك tängäk 天気。

سنكك sängäk 水を飲むための小さな壺、鉢。オグズ語。


v3-0357

سنكك singäk 城鎮の人の言葉では蚊を指し、田舎の人の言葉では蠅を指す。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  سندا قبر جذنلار

  sändä qopar chadhanlar

  قذغو سنكك يلنلار

  quzghu singäk yilandar

  دك منك قيو تمنلار

  dük ming qoyu tömänlär

  قذرق تكب يكرشور

  qudhruq tikip yügrüshür

 冬と夏の論争を描いている。冬は夏に対して此の様に言う。蛇、蠍、虫、蠅、蚊が人に害を齎す為、夏に蘇ってくる。彼らは尾を上げて人に襲い掛かる。


v3-0358

سنكك söngük 骨。諺では此の様に用いる。

  اذكو ار سنوكي ارير اتي قلير

  ädhgü är söngüki ärirati qalir

 善き人は骨が朽ちても名は残る。善い人は骨が土の中で朽果てても、その名はえ永久に残る。この諺は人に好く学ぶことを勧めている。


四字の語彙


تنكو tungu つんぼ。

تنكا tonga 豹などの類の動物、それは象の天敵である。此の言葉の主な意味は此の通りである。テュルク人の間では、此の言葉の意味は既に消失したが、人名を作る為に残っている。例えば、「تنكا خان tonga han トンガ・ハーン」、「تنكا تكين tonga täkin トンガ・テギン」。テュルク人の偉大な可汗アフラスィヤーブは「تنكا الب ار tonga alp är」と称し、これは「豹の様に強力な英傑」の意味である。

سنكو süngü 矛。

سنكا sanga お前に。「سنكا ايدم sanga aydim」お前に我は話した。


v3-0359

سنكى singi 消化しやすい。「بو اس ال سنكى bu ash ol singi」この飯はよ、こなれている。


語頭と語尾がイラートの字を帯びた語彙


ينكا yanga 岸、畔、盆地のへり、あらゆる河流の岸。オグズ語。

ينكي yangi 新しい、新鮮な。「ينكي نانك yangi näng」新鮮な物。

ينكو yungu ユング―。「بارمان barman バールマーン」の城に向かって流れる一河川の名称。この城はアフラスィヤーブの子が此の川沿いに建てた。建てた者の名が「بارمان barman バールマーン」であり、城は此れに拠って名付けられた。これはルームが、蒼天の聖人イスハークの子であるイーサーの子ルームが建てた事により名付けられたことと同じである。


語尾がグンニーの語彙


شبنك shäbing 小さな鉄の杵、鉄の杖。チギル語。

سدنك siding 「سدنك كول siding köl」シディン湖。「قجخكار باشي qochngar bashi」クチャンガル・バシ附近の湖の名称。

قذنك qadhing 樺の木。この言葉は諺では此の様に用いる。

  قذنك قاسنكا سكت سولنكا

  qadhing qasinga sögüt sölingä

 (樺は堅きに、柳は柔らかきに。)この諺の意味は以前の言及済みである。(v1-0374)


v3-0360

قشنك qashang のろまな、愚鈍な。奴隷を叱りつける時に使う言葉。

برنك burung 一矢の届く限りの地。「برنك اتي burung atti」ブルンを射た、一矢を届く限り射た。

برنك börüg 水が地面に作った溝。

ترنك täring 深い。「ترنك تنكز täring tängiz」深い海。オグズ人はあらゆる深く大きなものを「ترنك täring」と言う。広い河谷と伸ばした道の事を「ترنك اوري täring uri)と言うのは此れに由来する。学識深い人を「ترنك بلكا täring bilgä」と言う。

ترنك tiring ティリン(擬音語)。「قلاقم ترنك اتي qulaqim tring ätti」我が耳にティリンと響いた。これと似たあらゆる音を此の様に言う。「يسن ترنك اتردي yasin tiring ättürdi」弓がティリンと響かせた。これは弓の弦が発する音を表す。

جرنك chiring チリン。皿や碗の類が発する音。

كرنك körüng 「كرنك كول körüng köl」キョリュン湖。カシュガル付近の湖の名称。


v3-0361

بزنك bizing 我らの。此の言葉は「بز biz」に所有格の「ك ― ng」を加えたものであり、物の所有を表す。「بزنك اؤ bizing äv」我らの家。

تكنك täging リス。

بلنك bäling 恐慌。敵が攻めて来て民衆たちが陥るパニック。非常に臆病な人の事を「بلنك ار bäling är」と言う。

بلنك bulung 方角、隅っこ。

تلنك tulung こめかみ。

تلنك tulung 輪。轡にある輪っか。それは馬の耳の下から通して、馬の頭と額に掛ける皮を連結する。「يكن تلنكي yügün tulungi」とも言う。

جلنك chalang 「جلنك باشي chalang bashi」饒舌な人、お喋りな人。

جلنك chäling 碗、陶器。「جلنك اياق chäling ayaq」秦の陶器。

جلنك chalang 丸禿の。「جلنك يير chalang yär」丸禿の地、即ち草木の生えない不毛の地。

خلنك huling 秦から齎された色を帯びた絹織物。

قلنك qaling 豊かな宝、手厚い礼。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  قلنك بيرسا قيز الير كراك بلسا قيز الير

  qaling bärsä qiz alir, käräk bolsa qiz alir

 手厚く与えれば娘を取れ、要れば娘を取れる。ふんだんに財貨を与えることによってのみ娘を娶る事が出来る。何かを欲する人は、その物が必須であれば、銭を惜しまぬことによって物を得られる。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  بردم سنكا قلنك

  bärdim sanga qaling

  امدي مني النك

  ämdi muni aling

  امكاك منك بلنك

  ämgäk mäning biling

  اغرر تنكر برغلي

  oghrar tüngür barghali

 娘婿は岳父に言った:「私は手厚く結納しました。彼女を下さい。あなたは私がこれほどの結納を集めるのに、どれほど苦労したかご存知でしょう」。岳父は言った:「娘は既に行く支度が済んでいる」。


v3-0363

كلنك kölüng 池、水溜り。この様な所ではカラスが戯れている。


本章中のミサッラル


يبنك yabang 不毛の地、沙地。「يبنك يير yabang yär」野獣が足を踏み入れたら、抜け出すのが困難な沙地。

يتنك yatang 毛を弾く工具。

يدنك yading 満開の。「يدنك سوؤ yading suv」満開の水、地上に溢れ出しそうな水。

يشنك yüshäng 滑らか、真っ平らな。「يشنك تاش yüshäng tash」つるつるの石。

يلنك yaling 輝かしい。「يلنك قلج yaling qilich」煌く刀、即ち鞘から抜かれた刀。

يلنك yaling 丸裸の、丸禿の。「يانك ار yaling yär」裸の人。あらゆる丸禿の物を「يلننك yaling」と言う。

يلنك yäling 風の多い、風の吹き荒む所。「بو يلنك كون bu yäling kün」今日は好く風の吹く日。


v3-0364


「ج ― ch」から成るグンニーを帯びた語彙


برنج birinch 第一。「برنج نانك birinch näng」一番目の物。規則の一番目に符合する。使われることは稀である。

كزنج közünch 観衆。いま何かを見物している人々。

بزنج bäzinch 糸球。絹或いは綿の糸球。

بزنج bäzinch 幹と葉が紅い植物。庭に生え、薬になる。

سؤنج sävinch 嬉しい、歓楽、愉快な心情。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  اكوش سؤنج بلسا قتغ اخسنور

  üküsh sävinch bolsa qatigh ohsunur

 多く喜びあれば、苦しみを楽しむ。喜び極めれば悲しみが生れる。喜びが過ぎた人は、何かのきっかけで、悲しみに陥ることがある。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  مندا بلنر سؤنج اتي قذغو اتار

  mändä bulnur sävinch oti qadhghu atar

  قرشي كوب سغدج اني اجمق اتار

  qarshi körüp saghdigh ani uchmaq atar

 私に嬉し楽しさを齎す良薬は、憂鬱に駆り立てる。我が家を見た友人は、その華麗さ故に、それを天堂と見做す。


v3-0365

سقنج saqinch 悲嘆、心配、意見、考え方。

قلنج qilinch 性格、行為、品行、気性。「اذكو قلنج ädhgü qilinch 善い気立て」というのは此れに由来する。これに相反する悪い気立ても此の言葉を用いる。

قلنج qilinch 性格、気質、女性の甘えた性格。「اكش قلنجلنما üküsh qilnchlanma」そんなに甘えるな。

كلنج külünch 笑い。


本章中のミサッラル


يفنج yafinch ヤフィンチ。「الا ila イリ」付近の小都市の名称。

يكنج yükünch 礼拝、祈祷。「تنكريكا يكنج يكندي tängrigä yükünch yükündi」神に祈りを祈った。「ال بككا يكنج يكندي ol bägke yükünch yükündi」彼はベグに頭を下げた。その他にも用いる。


v3-0366


四字の語彙


تتنجو tutunchu 養われた。「تتنجو اغل tutunchu oghul」養子。

سزنجي sazinchi 「سزنجي تاشي sazinchi tashi」石膏石。

قرنجا qarincha 蟻。オグズ語。


本章中のミサッラル


يرنجا yorincha 苜蓿、紫ウマゴヤシ。オグズ語。


فَعال fäal 型の語彙の章


سنكار singar 片方、側、傍ら。「سنكاردن يري singardin yori」伴に行け。

منكار mungar それに対して。「منكار ايدم mungar aydim」我は其れに言った。

منكار mingar 泉。オグズ語。

ينكان yangan 頭の白い鴉。


v3-0367

سنكان sangan 「سنكان نانك sangan näng」味の無いあらゆる物。


本章中のミサッラル


ينكاغ yongagh 誹謗、誣告。「اني ينكاغ ينكادي ani yongagh yongadi」彼は告げ口を告げた、讒言した。

ينكاق yangaq こめかみの骨、頬骨、口の両側の歯の付いた骨。あらゆる物の両側を此の様に言える。門の両側の木を「قبغ ينكاقي qapugh yangaq」と言うのも此れに由来する。

ينكان yangan 象。オグズ人は此の言葉を知らない。


فَعْلى fä'li 型の各種動符を帯びた語彙の章


تنكري tängri 神、尊貴にして偉大なる蒼天。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  تين تبغساق تنكري سفنج سز

  toyin tapughsaq tängri säfinchsiz

 僧侶が崇めても、神は喜ばず。異教徒の門主が偉大な神を拝んでも、偉大なる神は彼らの事を喜ばない。この諺は、表向きは賛同していても、心の中では反対している人を疑って言っている。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  تن كن تبن تنكريكا بينمغل

  tün kün tängrigä boynamaghil

  قرقب انكر ايمتو اينمغل

  qorqup angar äymänü oynamaghil

 夜に昼に拝んでも神に驕る莫れ、彼を恐れ、喜び戯れる莫れ。神が呪うべき異教徒たちは「天」のことを「تنكري tängri」と言う。彼らが眼にする所のあらゆる大きなもの、高山、大樹もまた「تنكري tängri」と呼ぶ。これらのものを崇め奉るのである。彼らは此の様な物知りを「تنكركان tängrikän」と呼ぶ。神を此の様に扱う血迷った者どもめ!


v3-0368

انكرا ongra 仰ぎ、仰向け。「ار انكرا يتي är ongra yatti」人が仰向けに寝た。

تنكرا tongra 垢、体の垢。

تنكرا tongra 腹這い。「ار تنرا تشتي är tongra tüshti」人が這い蹲って倒れた。


v3-0369

تنكشو tungshi 燭台。

جنكشو chängshü 短い短い綿の上着、チャパン。

جنكسي chängshi チェンシー。ホータンの富豪の名。ホータンの名は此処から来た。人々は「جنكشي chängshi」という言葉を改称して「جمشيد jämshid」とする。

منككو mänggü 永久、永遠、永劫。此の言葉は名詞であるが、動名詞でもある。「منككو اژون mänggü azun 永久の世」。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  تغب تقي قلمدي منككو ارن

  tughup taqi qalmadi mänggü ärän

  اژون كني يلدزي تتجي تغار

  azun küni yulduzi tutchi tughar

 時が流れる理を此の様に言う。生まれた者は誰でも永遠の不死を得られない。ただ、この世に太陽と星々は現れてから、永遠に不滅である。

جنكلي chängli 「جنكلي منكلي chängli mängli」シーソー。子供たちの遊びの名称。アラブ人は其れを「الدوداة」と言う。


v3-0370

قنكلي qangli 木輪の大車。重い物を載せて運ぶ大きな車。

قنكلي qangli キフチャーグ人の偉人の名前。

سلنكو salngu 投石器。中に石を入れて投擲する投石器。

شنكلا shünglä シュングレ。ヤバークー地方に生える草、根は食べられる。

قلنكو qalngu 浮遊、水面に浮かぶ。「سؤدا قلنكولادي suvda qalngkadi」水に浮かんだ、即ち、彼は泳いだ。

كزنكو közngü 鏡。


本章中のミサッラル


ينكقو yangqu 反響、木魂。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  يزماس اتم يغمر ينكلماس بلكا ينكقو

  yazmas atim yadgnur yangilmas bilgä yangqu

 迷わぬ射手は雨、敵わぬ賢者は木魂。優れた射手は雨、何故ならば、雨は地面に向かって落ち、地面はとても広く、此の様に広い的に向かって射ったものは必ず当たるからである。これに対し、あらゆることを正確に言う賢者は木魂である。何故ならば、何を言っても返ってくるからである。この諺は、一つ間違えて覚えたことを其のままし続ける人の事を言っている。

يلنكو yanglu ブランコ。娘たちが遊ぶ遊戯の名称。二本の縄を樹木や棟木に結んで、一人の娘が其の間に座って地面を蹴り、高く上がったり、低く下がったりする。


v3-0371

ينجكا yinchkä 細かい、細い、なよやか。「ينجكا ترقو yinchkä torqu」精巧な麻布。「ينجكا قيز yinchkä qiz」なよやかな娘。「ينجكا كشي yinchkä kishi」天を崇める人、苦行僧。

ينككا yänggä 嫂、兄嫁。兄の妻。


فَعالُو fäalu 型の語彙の章


تيانكو tayangu 頼れる者、信頼できる者。テュルク人の中で、「حاجب hajib」という言葉が好く使われる様になってから、此の言葉はあまり使われなくなった。此の言葉は動詞「تيندي tayandi 頼った」から派生している。可汗が信頼する人。人民も、この信頼される人を通し、己の請願や用件を可汗に伝える。彼からは然るべき答えを得、頼れるからである。


本章中のミサッラル


ينكيلا yangila ただ今、新たに。「ال ايشغ ينكيلا قلدي ol ishigh yangila qildi」彼は事を新たにした、再び始めた。


三字の語彙の篇は完


v3-0372


四字の語彙の篇


فَعْلَلْ fä'läl,فَنْعَلْ fän'äl 型で各種動符を帯びた語彙の章


تنكج tängüch 鉄炉、及び其れに似た高目の形状のもの。

سنكج sänkäch センケチュ。ハシバミに似て、やや大きく甘い果物。

سنكقر sungqur 鷹や隼。猛禽の名称。「طغريل toghril 鷲」よりも小さい。

قجنكار qochngar 牡羊。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  اكي قجنكار بشي بير اشجتا بشماس

  iki qochngar bir äshächtä pishmas

 二匹の牡羊は一つの釜に放れず。この諺の意味は、ある町に二人のベグが居て、共に相容れず、この中の一人が必ず此の地を去ることになる。「قجنكار باشي qochngar bashi」コチュンガル・バシ。とある都市名。

قنكدش qangdash 同じ血縁の。「قنكدش قدش qangdash qadash」同父異母兄弟。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  قنكدش قما ارور اكدش ارو ترتار

  qangdash quma urur ikdish örü tartar

 腹違いは波風を立て、同胞は網を引く。同父異母兄弟は大抵の場合、互いに相容れない。同母異父兄弟は仲良く、互いに助け合う。


v3-0373

منكلغ munglugh 憂いのある、困っている。「منكلغ ار munglugh är」困っている人。

تنكسق tangsuq 稀有の、稀に見る。「تنكسق نانك tangsuq näng」珍しい物。人が美味しい料理に出会った時に言う「تنكسق اش tangsuq ash」も此れに由来する。

ترنكق tirngaq 爪。

قرنكاق qirngaq 包丁。肉や麺を切る包丁。

قزنكق qaznguq 杭。北極星の事を「تمر قزنكق tämür qaznguq 鉄の杭」と言うのは此れに由来する。何故ならば、丸い天は其れを軸にして回転するからである。

جنكرق chingraq かなり硬目の。「جنكرق اون chingraq ün」硬い音、激しく響く音。

قنكرق qangruq 鼻音の重い人、鼻腔。

قنكسق qangsiq 血縁の無い。「قنكسق اتا qangsiq ata」継父。「قنكسق اغل qangsiq oghul」継子。


v3-0374

قلنكق qalnguq フケ。毛皮と皮を合わせる粘性の物、収縮するので皺が生れる。

تنكلك tünglük 天窓。

جنكلك chingläk 木蔦。

كنكلك köngläk 肌着、シャツ。

دنكال dängäl 土くれ。麦穂の切り株。


本章中のミサッラル


ينكج yängäch 蟹。オグズ語。

يلنكس yalngus 孤独な、単独。「يلنكس ار yalngus är」独り身の人。その他にも用いる。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  يلنكس قاز اتماس

  yalngus qaz ötmäs

 ぼっちの鵞鳥は鳴かず。この諺は何か有ったら人に助けを求めることを勧めている。

ينكرق yangraq 山の中の狭く深い谷。底には水が流れる道が有り、人は其の様な所を越えて行ける。

ينكشق yangshaq よくくどくど言う。「ينكشق ار yangshaq är」話が諄い人。


v3-0375

يلنكق yalnguq 人祖(アデム)の名。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  يلنكق اغلي يوقاذور اذكو اتي قلير

  yalnguq oghli yoqadhur ädhgü ati qalir

 人の子が消えても、善き名は残る。人祖の子が死んで消えても、その善行は名声になって残る。この諺は人々に好き行いを為すよう勧めている。

يلنكق yalnguq 人類、全人類。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  يقي ارر يلنكقنك نانكي تؤار

  yaqi ärür yalnguqung nängi tavar

  بلك اري ياغسن نالك سؤار

  bilik äri yaghisin nälik sävär

 人々の富こそが己の敵、聡明な人も何故己の敵を愛するのだろう。

يلنكق yalnguq 小間使い、侍女。オグズ語、キフチャーク語、スワール語。


v3-0376

ينكلق yangluq 失敗、過失。事情、言葉、行動などの過ち。


本章中のグンニー


تبجنك tapchang 三脚架。机に似た一種の用具、庭師が其の上に登って葡萄を摘み取る。ケンチェーク語。

جلبنك chalpang ぬかるみ。

جفشانك chifäshäng 酸っぱい。「جفشانك جغر chifäshäng näng」酸っぱい汁。

جفشانك chafshang 羊毛鋏。羊毛を刈り取る鋏。チギル語。

جؤشانك chävshäng 眼が涙がちな、視力の弱い人。

كفسنك käpsäng 施し物。よく脱穀した穀物を積み上げ、やって来た人に与える施し。

سؤلانك suvlang 枝の無い。「سؤلانك يغاج suvlang yighach」枝の無い木。

سؤلانك suvlang 真っ直ぐな、曲がってない。「سؤلانك سج suvlang sach」直毛。

قلقنك qalqang 盾、矢避けの盾。此の言葉のもう一つの形式が「qalqan」である。


本章中のマンクース


تيلنك taylang 美しい、気が利く、秀麗な。「تيلنك ار taylang är」利口な、嫋やかな、眉目秀麗な、身嗜みが整った人。此の言葉は若者に対して多用される。「تيلنك يكت taylang yigit」美しい若者。


v3-0377


本章中で「ج ― ch」を帯びた語彙


قزغنج qazghanch 入手した物、獲得した物。

قزقنج qorqunch 恐れ。

تزكنج täzginch 山のうねり。他にも用いる。曲がりくねった道を「تزكنج يول täzginch yol」と言う。


本章中のミサッラル


يركنج yörgänch 此の言葉は「تزكنج täzginch」と同義語である。道や其の他のものが湾曲してることを表す。

يركنج yörgänch 西洋ヒルガオ。樹木を覆って成長し、それらを枯らしてしまう植物。


فَعْلَلُو fä'lälu 型の語彙の章


قنكرغو qongraghu 鈴。


v3-0378

قنكرغو qongraghu 耳の根元の突起した骨。

سنكركو sängrägü 鼻水。「سنكركو اتsängrägü at」鼻垂れ馬、鼻から鼻水が垂れてる馬。いつも鼻水垂らしている子供を罵る時も「سنكركوsängrägü 鼻垂れ」と言う。


本章中のミサッラル


ينكدكو yingdägü 子供を罵る時、「ينكدكو yingdägü」と言う。これは「鼻垂れ小僧」の意である。


本章中の فَعَنْلالْ fäänlal 型で各種動符を帯びた五字の語彙


سنكرسق singarsuq 二人で一緒に馬に乗る時、後ろの人が座る場所。

منزكاك müngüzgäk 繭、手の上で生きている繭。


後がグンニーの語彙


قرنكغو qaqangghu 黒い、暗い。


v3-0379

قزنكقو qazangqu 結び目。「يب قزنكقو بلدي yip qazangqu boldi」糸を結んだ、即ち解けない程度に結んだ。


本章中のミサッラル


ينكلغان yangilghan 間違う、とちる、錯乱した。「ينكلغان ار yangilghan är」錯乱した人、何もかも過去の事を忘れてしまって錯乱した人。


本章中の別の一類


تنكلكج tängälgüch 鷹。オグズ語。

تنكلكون tängälgün 鷹。其の他のテュルク人の言葉。

تنكركان tängrikän 蒼天を拝む学者、僧侶、苦行僧。異教徒の言葉。


本章中の六字の語彙


ينكلدرق yangalduruq 雨避け帽、風雨を遮る為、雨具に縫い付けられたフェルトの帽子。


 本章では、二つの静符が一緒に出現する。鼻音の発音は重く、二つの静符が一緒に現れる時、話者には発音が難しい。グンニーと舌尖音が一緒に出現する場合、発音は容易そうであるが、此の様な例は少ない。例えば、「سوزنكري كيشي sözngäri kishi くどくどしい人」の様にである。此の言葉の中の舌尖音「ر」は、発音が滑らかであるからである。此の様に承知すべし。


v3-0380


グンニーの名詞の篇は完

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