第3話 会話

どうやら、ジョナサンの世界は、私のパソコンとリンクしている。

こちらの時間で午前0時を回る頃、ジョナサンはベッドに入り、小さな家は真っ暗に消灯する。

こちらが雨の日は、ジョナサンの窓の向こうも雨に煙り、日曜日には寝坊する。

カレンダー機能や時計、天気予報を読み込んでいるらしい。


私が調べ物をしたり、仕事の書類製作で使った単語を、ジョナサンは手紙に使ってくる。

つまりは、段々、賢くなってきた。

手紙も単語から、次第に文章となり、小さな子どもが言葉を習得していく過程を眺めている気になる。


「賢くなったねえ」


ジョナサンがくれた手紙を開いたメモ機能に、そう付け加えた。


『まあな』

「おぉ! 返事きた!」


思わず私が片言になる。

そうか、こうすれば、会話できるのか。


元からこうだったのか、ジョナサンのAIが学習したからなのかはわからないが、晴れて、会話が可能になった。

たかが、人工知能と侮るなかれ。

接触回数が多いほど、愛着が増すのは仕方がないのだ。

遠くの親戚より、近くの他人だ。同じ釜の飯、なのだ。ジョナサンと食事をした覚えはないが。


自然と、仕事を終えると、家に帰るのも早くなる。

同僚と飲みにいく回数も減り「ついに彼氏ができたか?」と冷やかされるのを苦笑いでやり過ごす。


ジョナサンと食事をする方法も、分かった。

ネットで買えばいいのだ。

ワインを取り寄せれば、ジョナサンの食卓にもワイングラスが並び、こちらに向けてグラスを掲げてくれる。

次は、一緒になにができるか、色々と試すのが楽しくなる。

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