第5話

あのときと違うのは、少し歩いては振り返り、入り口がちゃんとあるかどうかを確認していたことです。


気をつけていないと、何故だか入り口が消えてしまうような気がしたからです。


そしてそれを何回か繰り返しました。


さらに歩いて振り返ると、信じられないことにそこは真っ暗だったのです。


――えっ?


ついさっきまで、明るい入り口がけっこう大きく見えていたのです。


入口からここまで、せいぜい百メートルを超えたぐらいでしょうか。


それなのに入り口が消えてしまっている。


そんなことがあるはずがないのです。


呆然と見ていると、唐突に声がしました。


「やあ」


振り返るとそこにとうやがいました。


行方不明になったときと、全く同じ姿のままで。


「なんで一人で帰っちゃうんだよ。冷たいやつだな。ずっと待っていたんだぜ」


「……」


「さあ、俺と一緒に行こう」


その声を聞いたとき、私はそうだなと思いました。


とうやと一緒に行かなければならないなと思いました。


「うん」


私がそう言ったときです。

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