第2話

僕が会社を出たのは、18時前だった。

日は落ちてきていたが、まだ夕日が顔を出していた。


藤原橋ふじわらばしを渡ろうとした時

橋の上に朝見た占い屋があるのが見えた。

仕事に追われ、夢のことも忘れることができたと思っていたが、一度気にするとやはり

気になってしまう。


浩介は朝決めた通り、占い屋に声をかける。

「すいませんー」

声をかけると、赤い布がかけられた机の上に置かれている水晶を覗き込んでいた占い師が

顔をあげた。


「はい⁈」


まるで客が来ることなんてまったく考えていなかったかのように占い師はすっとんきょうな声をあげた。


(かりにも商売を開いているならもうちょっと緊張感を持ってほしいな…

しかも占い師ならもうすこし威厳とか…)

などと浩介が考えていると

占い師の女性が商売用の顔をこちらに向けて言う。


「すいません…まさかこんな時間にお客さんが来るなんて思ってなくて…」

顔とは裏腹に浩介が考えた通りの理由が返ってきた。

(僕の方が占い師にむいてるんじゃないか?)

そんなことを思ったとき。


「あなた気になることがありますね?けさ

夢見ませんでしたか?」

僕はぎくりとして改めて女性をみた。

よく見るとこの女性、頭は紫色のフードで

覆い隠されているが、隙間から覗く水色の髪や

細めの眉に大きな瞳が特徴的な

なかなかの美人だ。瞳の色は初めて見るがターコイズとでもいうのだろうか。カラーコンタクトでもしているのだろう。

先程のやりとりさえ見ていなければミステリアスな雰囲気も感じられるだろう。浩介は少しだけ惜しい気分になった。


「そうなんです。じつは…」

浩介は今朝の夢の内容や見ているときの気持ち

そしてなんだかモヤモヤしている部分があることを伝えた。

「そうですかわかりました。ではその夢について調みましょう」

その前に…

と女性は名刺をかたわらにおいてある道具箱から取り出して差し出してきた。

響無おとなしスミレと書かれている。

肩書きを見ると

看板と同じ赤い文字で占い師とだけ書かれている

そのことが怪しさを前面に押し出していた。


「さてと」


スミレは水晶玉に手をかざしながら

覗き込んでいる。


「!見えました…」

彼女は覗き込むのをやめて天を仰ぎながら

ふぅと息を吐いた。時間にすると数分でそんなに疲れる動作をしたようには浩介には

見えなかったのだが…


「おにいさんのみた夢を少しだけ詳しく見てみました。靄の中にいた人 女性みたいですね、なにか心当たりは?」

浩介にはさっぱり心当たりがなかった。

今は仕事場も変わったばかりで、他のことに

打ち込む余裕もない。

もちろん恋愛をしたことがないわけではないが。


その時浩介はあることを思い出した−−−








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あのとき見たユメ @yumeno-20

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