第3話能力テスト

 金曜の夜、為治は明日の授業に向けて早めに寝ようと思っていたが中々眠れずにいた。


 下校時に詠美に近づいてきたあの能力者のことを考えていたのだ。あの能力者はウチの学校の生徒だ。能力者は現代社会に多く存在する、つまり学校内にも多くいるということだ、最近の能力者事件のこともあり能力者がトラブルを起こすことも増えている、もちろん今までウチの学校でもそういうトラブルはあったがやはり過剰になっている気がする。


 為治が出会ったあの能力者以外でもトラブルがいくつかあったことを先ほど知った、大事にならなかったそうだから知らない人の方が多い。


 退学になる生徒が少ないのが不思議なほどに。


 この学校の場合、退学になるのは主に能力で人を殺した場合なのだ、それ以外の怪我などは停学処分で済まされてしまう、少し甘くはないだろうか?


 それもウチの学校は特に能力者の数が多いのだ。その分、トラブルも多い。


 いちいち退学にしているとキリがないというのが学校側の考えだ。


 まあ能力事件は即退学させるという考えの学校も多少はある、といっても全体の割合としてはとても少ないのだ。


世界の能力者の割合は現在、八割といわれている、増えた原因は俺は知らないがそれは良くない傾向だと言いたい、これ以上詠美を危険な目に遭わせてたまるか、俺はそう自分に言い聞かせたのだった。







──────







 土曜日、為治は体を起こしゆっくりと眠気を覚まして高校に行く準備をする。


そしてゆっくりと壁の時計へと視線を移動させる。


「七時四十一分か……え?」


 俺はてっきり六時四十一分かと思い込んでいたのだ。


 朝食を少しだけ取ると、服装を整えて学校に向かう。


 教室についたときにはホームルームが始まりかけていた、あと二十秒遅かったら終わってた


 今日は体力テスト


 体力には自信あるとはいっても午前授業が全てそれだというのだから少し退屈でもある。


 体力テストは七種目。


 握力、長座体前屈、立ち幅跳び、走り幅跳び、反復横跳び、上体起こし、ソフトボール。


 どれもなんなくこなせるような内容で助かる。


 残った時間は二キロマラソンをして終了、目立ったトラブルもなく終わって良かった。


 ただ挙動が微妙に不思議な生徒もいた気がするが、気にするほどのレベルではないだろう



 能力者だけは放課後他の人より残って能力のテストを行う。


 この学校は能力者の割合が高いのでほとんどの人が残ってテストを受ける、こういう時ほどトラブルが起きやすい気がする。


 能力者だけは放課後他の人より残って能力のテストを行う

場所は地下の特別に広いルームで行う


 昔は校庭で行っていたが物が飛び散らかり

周りの人に被害がかかったためお金をかけて地下を作った。


 中はスッキリとした部屋となっておりあるのはベンチだけである


 能力者が能力の練習用に使うのに特化した場所といえるだろう。


 能力者にはちゃんと能力を制御できてるか正確に動かせるか強さを計るテストがある。


 どこまで遠くまで行けるか

 副作用で体に害はないか

 その人にあったいわゆる診断みたいなものだ。


「ハッ!」「フッ!」


 ……建興か、アイツはもとより運動神経が高いことも相まってテストの結果もよいだろう。


 何か起こらないといいが……


 為治は刃を出す能力なので刃の生成の時間計測、どこまで刃を飛ばせるか、その他は似たような能力者達との実戦のような物が多い。


 能力テストが終わったら紙と手を出し計測機に計り


判定を出してもらう


 耐久 B

 どこまで耐えれるかを他の武器をぶつけることで計る


 顕在 A

 物を生み出しどれだけ長く出せるか計る


 器用 B

 自由自在に動かせるかを計る


 攻撃 B

 壁にどれだけ傷をつけられるかで計る


 範囲 C

 能力の届く範囲を計る


 独自 B

 その能力による特殊能力を使った実戦形式の計測



 やや平均だな


 この学校にはたくさんといってもいいほど能力者がいる。

みんな能力を使うのが上手い、あれぐらい上手かったら怪我をすることはないだろう、と断言出来るほどに。


 まあ、それぐらい能力が高いと逆に心配になってもくるが。

 ……心配しすぎか


 テストが終わったのは午後三時四十分くらい、相当な時間を食っていたようだ、まあ能力者の人数一人一人に合わせているのだからしょうがないと言えばしょうがないが


 先に終わっていたのか詠美が校門の前で俺のことを待っていてくれた。


「早く終わったんだな、テスト」


「女子の割合は少なめだからね、早めに済んだの」


「そうか、ということは待たせてしまったよな、すまん…」


「いやいや、そんなことないよ!私はそういうの気にしないし、待つのは好きだから……」


 そう言ってはいるが微妙に下を見がちで話している所からやはり本当は寂しかったのだな、ということが分かる


「も、もうこんな時間だし、早く帰ろ!」


 詠美は為治が何を考えているのか察したのだろう。


頬を赤らめて早口で話すことから相当恥ずかしがっているのだろう


「……そうだな、早く帰ろう」


 為治はそう言いながら帰り道を詠美と共に歩いて行く

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