第2話一人目の能力者

 今日は金曜日だ。


 そろそろ季節も秋になり、ウチの学校はそろそろ冬服移行期間に入る。


 全員とまでは行かないが、歩く生徒は大体冬服を着て登校していることが伺える。


 とはいってもそんなに寒くもなく、暑いわけでもないのでまだ気分的には夏と変わらない。


 ちなみに今日も詠美は一緒ではない。


 というか最近は忙しいのか学校では見かけても話すことがない。


「タメジ、今日も詠美ちゃんと一緒じゃないのか?」


 性格良くて好かれるタイプではあるが特にイケメンだと言うわけではなく人混みの中に紛れれば分からなくなってしまうような見た目だ。


「詠美は最近忙しいみたいだからな」


「そうなのか、お前は詠美のことが気にならないのか?」


「いや、気にしているつもりだ、表情に出ないだけじゃないか?」


「そうか、気にしてるんなら詠美ちゃんに実際に何で忙しいのか聞いてみたらどうだ?」


「詠美も何か事情があるんだろう、深く問い詰めるつもりはないよ」


 為治は香川にそう言い、自分の席に座った。


 始業時間まで後五分ほど時間があるのでテスト勉強をすることにした、もうすぐテストがあるため、他の生徒も為治と同じようにテスト勉強をしている者も多くいる。俺は勉強はそれなりに得意なのだが、忘れるといけないので予習しないといけないな。







──────









 ……終わってしまった。まず見落としがないか誤字を確認してたが正解のように思える。


今までは時間を潰そうと四階から外を見ていたせいか席替えで逆の教室の出入口の近くの席にされてしまった、俺は背が高いのでよく後ろにされ、よく目立っていたからな。


 さてどうしたものか、居眠りでもすると教師は何時間か説教されそうだし、前か隣の人を見るとカンニングだと勘違いされそうだし…あっ


 前にテレビで見た海外から来た服店に行こうかなと思ってたな。できれば安く買いたいからあまり派手すぎず長持ちするの買わないと……


 そう考えているうちに時間は過ぎていき…


「はいテスト回収するよ~」


 教師の端真先生はそう言った。


 俺は前の人にプリントを渡す


「ホームルームの時に点数が四十点以下なら残れよ」と言われた。


さすがに厳しいのではないかと他の学校の人間なら思うのだろうが、このクラスの生徒は勉強が得意な人達が多い、ただ二名を除いて…


 その2人は宮村君と最上さん、


 宮村君はいつもテストではいい点が取れないけどいつも笑ってる。おかげで説教が絶えない だが運動ではトップスリーに入る実力をもつ


 一方最上さんはたまにいい点は取れるがいつも考えこむため時間が過ぎていく。そのわりには予想外の展開には強く対処できるが時間が必要


 と人の紹介はこれくらいにして、

 このクラスは最近おかしくなっている。もとから変わり者がいるが何かの前兆のような気もするし気のせいかもしれない。







────────







 放課後、あることが俺は気になっていた。


「テストのこと?テストは半分くらい埋まったから大丈夫だよ!」


 そう、二人のテストのことだ。


 宮村は皆と話している、…とても不安だ、どうにかしないと…


「あの、教えてください、お願いします」


 最上は勉強を教えてと頼んでる


「あ…今日ちょっと用事が…」


「えっ…ならしかたないね…」


 誰とも話しても拒否されて困っている


 このままではあの二人が退学になるかもしれない…仕方ない、俺が教えるしかないな、まず宮内から


「宮内くん、今からでも勉強しないか」


「えぇーそう言っても俺みたいのは勉強みたいな集中することは苦手だし~?」


「宮内くんのために俺は言ってるんだ」


「勉強みたいなめんどくさいことをやって折角の人生潰すより遊んだ方が得だと思わな~い?」


 宮内は軽いノリでそう返す。


 こいつ……


「このままだと君は退学になる、そうなると宮内くん、君のこれからの人生が狂ってしまうんだぞ」


「………確かにそうだけど~」


「じゃあ勉強してくれるな?」


「分かったよ……」


 そして勉強を教えてくれる相手がいなくウロウロしていた最上くんに話しかける。


「最上さん、俺がテスト対策教えようか」


「え!本当に!ありがとう!」


 笑顔で喜んでくれた

 さてとどこから始めようか…







───────








「ありがと~う、助かった~」


「本当にありがとう、澤田くん!!」


 俺は二人に勉強を教え終えると帰宅準備をして家に帰る準備をする


 階段を降りようとすると階下に男女二人組みが集まっているのが分かった。


 男の方は知らないがみるからに三年生ぐらいだろうか、そして女の方は……詠美だった。


 俺が急いで階段を降りて駆け寄ろうとすると気づいた男が俺の方を振り向く


 ウグッ!!


 突然ボールが俺の足に高速で飛んできたのだ。


「痛ぇ…!」


 その時突然そのボールが上に上がり顔に近づいた、かすりはしたがとても痛い、なんだろうかこれは


「ちっ、外したか、」


 この玉は男が放った物ということか


「詠美!!」


 俺は痛む足を引きずりながら階段を降りる。


「なんだ、お前詠美のことを知ってるのか? 」


 こちらのセリフだッ……!!


「てめェ!俺の詠美を返せ!」


「まさか…詠美の…彼氏か?」


「そうだ!!」


 そう言いカバンからおよそ三センチはあるのではないかというほどの玉を取り出す。


「俺の玉を喰らわせてやるよ!」


「おまえ…その言い方…誤解されるぞ…」


 呆れた顔で為治はそう言う。


「いや、この流れで下の話なんてしねえよ!!」


 そう言い玉を三つ投げつける


 俺は避けようとした、が何かおかしい

 玉が追尾している…!


「ぐうっ…!」


 当たった足に玉が高速で回転し苦痛を与える


 血はでなく、肉体に痛みを与える


「…っ!」


 能力を使ったとしても俺の場合威力が強すぎて致命傷を負ってしまう可能性がある…なにかしないと…


「受けとれェェ!」


 カバンの中からたっぷりと入ったボールを手でつかみ投げた、

 これは避けられない…!俺のはすかさず腕で守った


「……ッ!」


 最初に当たったところに集中攻撃してくる


 腕が腫れて痛い


 なにか手にあるのか…


「もう能力を出すしかないな」


 俺はそう思い手に攻撃を仕掛ける。


 手に力を込めて


「なっ…なんだこれは!」


 為治の手から光輝く


「刃…といえばわかるかな」


 為治の能力『創刀(クリエイトサーベル)』

 それで俺は刀を創り出しこいつに攻撃したのだ。


「これで攻撃を封じた、参ったと言え」



「クッ……予想以上に効くなあ、だが!」


 そう言い、男はカバンの玉を開ける。


「さぁ!この玉全てを食らわしてやるぞ!もう手加減はしない!これでトドメだッ!」


 カバンから勢いよく玉が飛んでくる、為治は避けようと試みるが


「んなっ…」


 だが、その玉が当たることはなかった。


 パトカーのサイレンだ、サイレンが聴こえたと思うとその玉の軌道がずれてその音の方向に落ちた。


 為治はその仕組みに気づいた。


「ようやくその仕組みが分かったな」


「な、なにを言う!」


「音に反応するんだよ、足音とか声とか、」


「くっ…何故だ…」


「最初は手に細工してると思ったんだがな、ただなにかおかしくて」


「さて、どうしてもらおうか」


「…わ、わかった!詠美は離すから!しかし今回だけだぞ!いつかお前を倒してやるッ!」


 そう言い捨て男は逃げ出した


「詠美、あの男は?」


「俺の彼女になれと脅されて…」


 詠美は恐怖を感じた様子でそう答える。


「あの男にはあまり関わらない方がいい」


「分かってるけど…」


「大丈夫、俺が詠美を守ってやるよ、たとえ俺の能力が無くなったとしても」


「…ありがとう」


 詠美は怖がってた顔が笑顔に変わった。

 為治と詠美は一緒に下校したのだった。

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