Chain and blade―鎖と刃の能力者―
海老旗魚
迫る日常の危機
第1話終わる前の日常
澤田為治は私立鶯梭高等学校の生徒であり、頭脳明晰、品行方正な高校生だ
といっても全てが完璧な訳ではなく時には失敗をしたりすることも多々ある、まあ、一般の人からすれば俺のことは「できる高校生」程度の認識だと思う。
ちなみに俺には彼女が一人いる。
名前は塩沢詠美、俺と一つ年が違う上に性格も正反対だ。親の事情で恋人になったがそれもまだ一ヶ月、二人の仲はまだ良好ではない。
それでも俺は詠美のことは少なからずよく思っている。詠美とまだ恋人らしいとはとても言い難いが、それでも数日一緒にいて彼女のことは俺なりに分かろうとしてきたつもりだ。
口数は少ないがそれでも俺が話すことに全て耳を傾けてくれている。
──────
現在は木曜、玄関にある鏡で制服を整え、立ちながら靴を履き外へ出る。
いつも家から出るときは鍵を閉めてゴミをゴミ置き場に捨ててから登校する。
天気は晴れている、こう晴れていると自然と気分も良くなるというものだろう。
学校へは電車で十分、その次に坂を登ることで着く。坂は急でありバスを使う生徒も多くいるが俺は普通に歩いている、意地を張っているわけではなくバスに所持金を使いたくないためだ。
さて、学校へ着いた。
学校の玄関で靴を履き替え、すかさず四階に向かう。
一年は三階、二年は四階、三年は六階となっている。五階には食堂や文化部などの部室がある。
最近はスマホを持ってる奴らが多く、よく授業でいじっていて没収される人もいるらしい。
四階に着いた、相変わらずクラスは騒いでいる、孤立するのも嫌なので普段はこのノリに合わせているが、正直そこまで騒ぐのは性分じゃないのである程度といった感じだ。
俺は何事もなく挨拶をし、席について伸びをしながら休憩した。
ガラガラ
扉の開く音と共に一人の教師が教室に入ってくる。
端真 陽芝(はじま ひざし) 俺のクラスの担任で野球部の顧問をやっている、短髪で熱血なのが特徴だ。
「ここ最近 無能力者暴行罪が増えてきています。能力者はともかく無能力者は注意をしてください。能力者は絶対に人や動物を能力で傷つけないでください。」
HRが始まって早々に端真(はじま)がそう言うと教室がザワザワし始める。
(ニュースでも取り上げられてるな、能力者が無能力者に暴行を加えるのを、
実は俺はその能力者の一人
俺が能力に目覚めたのは中三の夏だった
森の中で迷子になってる時に木が切り落とされていてその時に能力に目覚めた
詠美も同様だ。
「皆さんの中には能力者も無能力者の人も沢山いると思います、ですが、その力を決して悪用しようなどと考えないようにしてください」
そんな話が続き一時限目は終わったのだった。
─────
四時限目が終了し、為治は小さくあくびをした。
特に疲れるような内容の授業ではなかったが少し眠い気がする、そろそろ夕食だな。
為治はそう思い食堂へと向かう。
人がもめていた、どうやら食べ物を服にこぼされて怒られたようだ。ただ食べ物をこぼしたのなら問題はそんなにないがあの人がいたら別だ。
建興定(ケンゴウサダム) この学校での不良のなかの不良だ。茶髪に染められており、顔の所々にピアスが散りばめられているのが特徴的な所謂不良である。
元ボクシング部のリーダー的存在だったが、他の学生とトラブルを起こして退部した。
話は戻るが、とにかく昼食の食堂でこんな事を起こされても困る、他の学生はおびえている、早食いして立ち去る人もいればそのままおいて逃げる人もいる。
俺のような能力者が関わることでが相手ならず食堂のみんなにまで危害が及ぶことは避けたい。
しかも相手はクラスの人ときた
これはどうしたものか……
為治がそんな事を考えていると、突如建興のポケットから携帯の通知音が響く。
誰からの電話かは分からないが、そのまま食堂を立ち去っていく。
予想外ではあったが、無事に場が収まって良かったか……
____
ガタッ
午後の授業が終わったので帰路へとつく。詠美がいないため、1人だ。最近忙しいようで中々一緒になれない、少し寂しい気もするが、しょうがないと思い込む。
親は二人とも遅く家には俺一人だ。その為、今日は俺一人で家事やら夕食を行わなければいけないのだが、家事はともかく俺は料理はあまり得意でないのだ。
「外食にでも行くか」
そう思い、外に出た。
最近好物の酢豚を食べていないので友達を誘って前から気になっていた広東料理屋に行くことにした。
友達の名前は香川健一、俺の幼馴染で野球部、クラスももちろん一緒で、よく会話する。
電車を使うと遠回りになってしまうので歩いていくことにした。
そんなで香川と話しながら歩いていると詠美が歩いているのが見えた。あちらも気づいたのか声を掛けてきた
「あ、為治君···と野球部の····」
「···詠美か、久しぶり」
「俺って名前覚えられてないのかよ····」
香川は詠美に名前を覚えられてないことを知り、傷ついたようだ、香川の気持ちを悪くさせたままだとやりづらいので名前を詠美に教えてやる。
「為治君と、その···香川君はこれからどこかに行くつもり···?」
「家族がいないからこの香川と広東料理屋に行くつもりだったんだ、詠美こそ何か用事があるのか?」
言っておいてハッとなる、詠美が少し悲しそうな顔になったからだ。
「悪い、言いたくないなら別にいい」
「···ごめんね」
「な、なあ、そんな暗い顔しないでもっとパーっといこうぜ、パーっと····」
香川が空気を和らげようとしてくれているのが聞こえる
「そうだな、香川の言う通りだ、俺のせいで詠美の気分を悪くさせてすまなかった」
「い、いや為治君のせいじゃないから大丈夫···」
気まずそうに感じた香川が俺の手を引く。
「もう行こうぜ、じゃ、じゃあな、詠美ちゃん、今度はちゃんと名前覚えててくれよ」
そのまま詠美の姿は少しずつ見えなくなっていった
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