違法と合法
私の故郷で選挙があった。
と、言うのをラインのグループトークで知った。
30人規模の大きなグループトークの中で、お知らせがあったのだ。
「Aの父が立候補するので応援してください」
そのAさん自体は家族なのでラインでそう言ったやり取りをすることは禁止されている。そういうわけで、Aさんができない代わりに、友達であるBさんがそのような言葉を発信したらしい。
友達であるBさんがそのような発言をする事法が法律に抵触する事なのかどうかと言うところは、Bさんの発言を信じるところによれば問題ないのだが、私は「何のために法律があるのかを考えていないのか?」という疑念が払拭できなかった。
立候補者の家族の方が直接個人もしくは一団体に向けてお願いしに行く事がNGな理由として、何らかの圧迫感を投票者側が受けてしまうからである。
選挙カーの上に乗っかってスピーチするのは、己の思想を不特定多数の人間に対して送信しているだけだし、開かれた場所で
私はその当時、彼らの選挙には関係の無い場所に住んでいた為、関係の無い人間だったが、それでも腹が立った。
「法律に触れなければ、投票者側に圧力をかけてもいいのか?」
いくら、友達同士のこととはいえ……いや、だからこそ私にはこう聞こえた。
「私たちと仲の良いAさんのお父さんに投票しないということは、あなたたちはもう友達じゃあないから」
正直、既に彼らの友達というジャンルに区分されなくても全く問題ないほど縁遠い関係にあったので、私はそんなものを圧力には感じない。
だが、実際彼らの身近にいる友達の人たちはどうか?
「本当はCさんに入れるつもりだったけど、投票した後にBさんたちにちゃんとAさん父に入れたかどうか確認されたらどうしよう」
そう言う不安は
選挙なんてどうでもいいから、言われた通りにAさん父に入れますという人なら、この際問題ない。ただ、政治にかける情熱がある人間が、そこに居たらどうするつもりなのだということなのだ。
「Bさんに聞かれたら、Aさん父に入れたと嘘を吐いてしまおう」
と、自己肯定感を低める決断をするのか。
或いは、
「Bさんに聞かれたら、正直に自分が入れた人の名前を言おう。私は信念を曲げない」
と、30人規模のグループから無視されても良いという覚悟を決めるのか。
彼らはそこまで考えてない?
受け手側も普通はそんな事考えない?
私は考えた!
それに実際このラインのやり取りを見て、モヤモヤしていた人が居た。
「気になってネットで見てみたんだけど、法律には触れないんだよなあ」
私は彼にこう言った。
「法律を守るために道徳があるのではない。道徳を守るために法律があるのだ。君のそのモヤモヤ、つまり道徳観は間違いではない。ただそれを守ってくれる法律が無いだけだ」
まず、何のためにルールやマナーや法律があるのかを考えるべきだ。
そうすれば、ルールブックやマナー本や六法全書には書かれていない、己の道徳観に準じた一つの考えが生まれる。そしてそれを真理と呼ぶことは間違いではない。
簡単な例え話をする。今更ながらに。
路上喫煙禁止区域というものがある。
なぜ路上喫煙をしてはいけないのか。例えば人混みがある中で吸うと、火が他人を負傷させるかも知れない。煙が他人を害するかも知れない。近くに灰皿が無いとポイ捨てから火事が起きるかも知れない。ゴミが路上に溢れるようになるかも知れない。特にそう言う危険性がある区域だから、ここでは吸ってはいけないのだよ。ということだ。
では、その区域を出た場所で吸うのはOKか?
OKである。法律上。
そして道徳観的にも、周りに人はいないうえ、携帯灰皿を持っているのなら、OKだろう。
ただ、その近くにベビーカーを押して歩く母親を見たら、どうだ?
「法律上、ここは路上でも喫煙して良いのだから吸う」と言って、赤ちゃんが煙で
敢えて断言しよう。
Bさんは泣いている赤ん坊の横でスマフォを弄りながら煙草を吸い続ける人間だ。AさんもBさんのそれをトークの中で見て、やめさせていないのだから同じと言えよう。
もしも私が、その地域の選挙に行けるのであれば、対抗馬に投票していたかも知れない。
彼らの政策が何かは関係ない。ただ、少なくともAさんの父は、Aさんを歪んだ道徳観に育て上げた親なのだという認識を私はしているのだから、そんな人間に絶対に入れてはいけないし、当選させてはいけないと思うのだ。肯定する為に投票するのではなく、否定する為に投票するという、これまた捻くれた行動原理で投票に行く事になるが、それでも自身の道徳観を捻じ曲げるよりはよほどマシだ。
Bさんは善良なる一般市民であったし、Aさんの為に皆に呼びかける姿には友情を感じる。これが一般的なものの見方だ。
だが私の見方では「法律が何の為にあるのかを一度も考えた事がない人が、友情ごっこを実現する為に他の友達に脅迫状を送った」に過ぎない。
どちらが正しいのかは分からないが、私は少なくとも出来得る限りに考察を深め、私が「正解だ」と呼べる答えに到達したうえで、物を言っている。
前述したとおり、これは己にとって真理だ。たとえ不正解であったとしても、是正しろと命令される
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます