知性と暴虐

 虐めはなくせる。しかしそれは直ちに道徳で以ってではない。人々が本能から距離を置いて知性に身を寄せた時にである。



 なぜ虐めは起こるのか。

 それは集団の中の者がマウントの取り合いで憔悴する前に、手早く弱者に全ての荷物を負わせる為である。

 なぜマウントを取り合うのか。

 同じグループの中で上下関係を作るのは、群れを率いる為にそれが有用であるからである。

 しかしながらに人の行う上下関係の構築は、虐めに繋がりやすい。それは学校のみならず、職場にも存在する。

 そして陰惨無残な行いの果てに、人の命が奪われるという事もある。

 彼らが完璧な野生であった場合には、そのような事は起こるまい。

 上下関係だけをきっちりと作り上げ、リーダーがその群れを引き連れていく。

 しかし人間は中途半端に知性や文明などがあるものだから、その加減が出来ない。

 戦争だってそうだ。

 あれは野性で言うなら縄張り争いでしかない。

 野生の動物たちは縄張り争いで命を落とすことはない。

 されども人間は命がいくつ落ちようとも縄張り争いを止める事はない。



 人類は進むべき道を間違えたのだ、と説教めいた事を言うわけではない。

 私は実は、映画やアニメで簡単に批判できる物に分類される、文明や知性というものをいる。

 そしてその推し方は、尋常ならざる所にまで行き着いている。

 私は是非とも文明の発展によって、科学技術の進歩によって、ダークマターの謎を解き明かし、皆が不老不死の世界を作って頂きたいとこいねがっている。

 知性の行き着く先は、つまりそこだと思える。


 人はなぜ争うのか。

 

 それが縄張り争いと上下関係、つまり戦争と虐めを作る。

 そんなものは要らない。

 不老不死に成れば欲望は消え失せる。

 食欲も、性欲も、睡眠欲もない人になれば、人々は忽ち虚無との付き合い方を考えねばなるまい。

 もう他人をどうこうしている場合ではないのだ。

 自分に真摯に向き合わなければいけない。

 私は幾年もそうしてきた。

 私とはなんなのか。人はなぜ生きるのか。死ぬのか。何が正解か。不正解か。この連続の先に死があるのか。それとも死は連続からかけ離れた場所に用意されているのか。神はいるのか。いないのか。神とは何か。私が信じるこれは神ではないのか。

 因みに、この私が信じ切った神は、どうやら多様性と呼ぶらしい事を、私は最近知った。

 こんな考えを四六時中してみろ。

 虐めも戦争もしている場合ではないぞ。

 まして不老不死だ。

 生の事を考え続けなければいけない。

 しかも己で完結する生だ。

 要は、自分の子供に考える行為を押し付けられないのだ。

 自分では完成させられなくても、と言う考え方は出来なくなる。

 当たり前だ。

 不老不死が世の中のスタンダードなら、子を産むと言う行為は世の中のバランスを崩す反社会的行為になるのだから。

 何より、果たして精子や卵子が生成されるかも、最早怪しい。



 恐らくこの私の思想は、その時が来た時に日の目を見るべき思想なのだ。

 それゆえ皆死ぬのが当たり前のこの世では相手にされないマイノリティなのだ。



 だがしかし、知性の行き着く先には不死が有り、戦争と虐めが無くなった社会は必ず存在せしめる。

 私が恐怖するのは、一部の道徳マニアが不死を禁忌と恐れ、戦争と虐めのある社会に有用性を説き始める事である。そして更にその時代に私が居なければ、皆道徳という名の病魔に侵され、不死を封印してしまうであろう。

 私以外の誰かが、その道徳は毒だと言えるとは限らない。

 だから、そう言う意味合いでは、私は死にたくないのかもしれない。



 ただ、もしも、可能性は薄いが、不死にならずとも虐めを無くす事が出来るとするならば、全人類が本能から離れて知性に身を寄せる事だ。

 至極簡単に言うと、中途半端に得しようと考えなければ、良いのだ。

 人間が折角得た知性を蔑ろにして、本能に身を委ねる者が、いつだって虐めの発起人なのだ。

 先述したが、そう言う者は恐らく「自分とは何か」を考えた事すらない、浅はかな人間であるから、そもそも相手にしても言葉が明確に伝わる事は無かろう。

 だからその者が出現した時点で、最早手遅れな場合もあるので、やはり推奨はできない。

 虐める者に知性は無いのだから。

 知性の無い者に伝える術を私は知らない。

 私は今、

 を。

 を。


 私は他の随筆でも言った通り、差別は必要であると説いている。

 そう、つまりなのだ。

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