第15話

 僕は足が震えている。大勢のニワトリ人間が小学校に侵入しているから。サクラちゃんも表情に余裕がなかった。お坊さんはお経を唱えている。もうわけがわからない。逃げたいけど逃げられない。仕方がない。戦おう。

 僕たち三人は教室を出る。ニワトリ人間のひとりと廊下で出くわしてしまった。松明を構えている。僕は短刀を構えた。ジリジリと距離を縮めた。お坊さんが先手を打った。お坊さんはニワトリ人間に殴りかかった。ニワトリ人間はいとも容易くお坊さんをはねのけた。僕はお坊さんが強いのだと思っていたために少し焦った。

 つまり、残るは僕とサクラちゃん。ニワトリ人間との体格差は明らかにあった。短刀では松明に勝てなさそう。ニワトリ人間がこちらに向かって来る。それでも僕はがむしゃらにニワトリ人間に立ち向かって行った。短刀で刺そうとした。ニワトリ人間が松明を盾にしてガードする。僕はなかなかニワトリ人間を刺せない。どうしよう。

 ニワトリ人間たちが向こうからぞろぞろとやって来る。僕はそれを見て逃げることにした。サクラちゃんとお坊さんも僕について逃げる。ニワトリ人間たちが追いかけて来る。どうしよう、勝てる気がしない。

 小学校を出た。僕たち三人はとりあえず山の神さまのお寺に向かう。山にあるとお坊さんから聞く。道にはニワトリ人間があちらこちらに居る。僕たちは鬼ごっこの要領で走る。しかし、いくら走ってもニワトリ人間たちは追いかけて来て増える一方。僕はとりあえず捕まらないように走った。後ろにサクラちゃんとお坊さんも走っている。山の道に差し掛かる。

 山の道には灯りがない。代わりに松明を持ったニワトリ人間が所々居る。どうやらお坊さんの言うことは正しいらしい。山の神さまのお寺に短刀を納めるのを邪魔するらしい。僕たち三人はひたすら必死に山道をかけ上って行った。

 どうやらニワトリ人間たちも息が上がっているようだった。僕たち三人はゼイゼイ言いながら山道を上がる。山の山頂にお寺はあるらしい。僕たちは頑張って道を登る。しかし、いつまで経っても山頂に着かない。僕は涙が出ながら山道を登った。サクラちゃんとお坊さんもついて来ている。しかし、足は痛い、お腹は痛い、疲労もこの上ないほどに達している。

 途中で暗いために何度もつまずきながら進んだ。なんでこんなに苦しい思いをしないといけない。登ること一時間だろうか。山頂のお寺に着いた頃には僕たち三人はおろかニワトリ人間たちも地面を這うようにしている。僕は短刀をお寺の中に納めるべく、疲れと痛みに耐えながらあと一歩を這った。長く感じられる苦痛だ。この歩いて行ける距離を僕は這って行った。そしてお寺に入った。ああ、奥に何か木の箱がある。そこに短刀を納めるのかな。僕は立ち上がって最後の気力を振り絞って短刀を箱の中に置いた。これで終わりかな。

 しかし、何も起きない。それどころか、僕たち三人はお寺の外をニワトリ人間たちに囲まれてしまったようだった。

「お坊さん? どういうわけ?」

「すまない、ケンタくん。山の神さまはもう居ないようです。どうやら、地獄の神が勢いを増してしまったからのようですね」

 え? どういうわけ? それでは僕たちの必死に頑張った努力は水の泡なわけ? え? ちょっと待って。何か燃える音がするよ? ウソだろ? 暑くなってきた。それに焦げ臭い。あ‼️ 炎が迫ってきた‼️

「ケンタくん、ニワトリのお札は覚えているかな。あれは地獄の神を封印していたのだが、どういうわけか封印が解かれてしまったようだ。これで終わりではない。神さまはもう一度我々にチャンスを与えてくれる。そして、この悪夢のような現世と戦うのです」

 僕は目の前が暗くなってしまった。意識はそこで一度途絶えた。そして目の前が明るくなって昼間の町の中に僕たち三人は居た。僕は全てを思い出した。これはあの時の状況と同様だった。そして、ニワトリ人間たちがぞろぞろと出てくる。僕は短刀を構えた。戦う、今はニワトリ人間たちを相手に戦わなければならない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る