第14話
また歩き始める。僕はそろそろ地獄が終わりに近いのだろうなと勝手に想像する。歩いても歩いても何も起きない。何も姿を現さない。次第に疲れて僕やサクラちゃん、ニワトリ人間たちは仮眠を取ることにした。疲れはてている。ちょっと目をつぶっただけで夢の中に居る僕。そうだと最初は思った。しかし、夢の中の町は僕とサクラちゃんしか居ない。あれ、暑いぞ? 汗をかいている。あれ、今までの記憶がない。あれ、目の前にひとりのお坊さんが歩いて来た。
「どうして、この町には他の人々が居ないのですか? お坊さん?」僕は質問をした。
「あなた方は誰ですか?」
「僕はケンタです。それとサクラちゃんです」
「ついて来なさい」そうお坊さんに言われて僕とサクラちゃんはついて行く。
町は不気味に静まり返っている。お坊さんはどこに行くのだろうか。無言なのがつらい。しかし、何も話が浮かばない。サクラちゃんは暑いと言う。
そうして僕たち三人はとあるお寺に着いた。小さなお寺である。僕とサクラちゃんはお賽銭を入れて手を合わした。
「何も思い出しませんか?」お坊さんの言葉に僕は必死に思い出そうとした。けれども、何も思い出せない。サクラちゃんも思い出せないって言う。
「いいですか、ケンタくん? ニワトリの神社は知っているね? 実は全てはニワトリが悪いモノを呼び寄せたのです。思い出せないのは無理はない。ケンタくんは人を殺してしまった。けれども、ケンタくんは記憶がない。今、正直に言うと、この世界は今までの世界とは真逆の世界なのです。ですから、今度は私とあなた方でニワトリ人間たちと戦わなければならないのです」お坊さんは確かにそう言った。するとニワトリがたくさん現れた。
「ケンタくん、この短刀を使いなさい」お坊さんから手渡された。僕とサクラちゃんはニワトリを見つめる。すると、ニワトリはみるみるうちに人の姿に変身する。僕は目を疑った。ニワトリたちがどんどん変身している。お坊さんはお経を唱えた。ニワトリ人間たちがこちらに向かって来る。僕は短刀を構えた。
「ケンタくん、ニワトリ人間たちはあくまでも神の使いです。でも、戦わなければならない」お坊さんがそう言ったと同時に、僕とサクラちゃんは走って逃げることにした。お坊さんは何かを叫んでいる。しかし、僕とサクラちゃんは走るのをやめない。ニワトリ人間たちが追いかけて来る。僕とサクラちゃんは出来るだけ走った。町は夕方の中、どこか懐かしい気がする。そして、小学校に逃げ込んだ僕とサクラちゃん。ニワトリ人間たちは小学校に入って来なかった。
「サクラちゃん、あのお坊さんは危ないよね?」
「ケンタくん、とりあえずここに隠れておきましょうよ?」
僕たちは教室で身を寄せ合う。どうして町にも小学校にも人々が居ないのだ? 次第に夜になっていく。不安が僕たちを襲う。外を見れば松明を持ったニワトリ人間たちが町を練り歩いている。異様な光景だった。すると、ドアが開いた。お坊さんがこっそりと入って来た。
「あなた方はなぜ逃げたのです? いいですか? 今度はニワトリ人間たちと戦わなければならないのです。不安なのはわかります。しかし、これは夢でもなんでもない。現実なのです」
僕たちは黙り込んでしまった。しかし、あれだけの大勢と戦うのは怖い。ニワトリ人間? 神の使い? ちゃんちゃらおかしかった。そして、このお坊さん。全てが悪夢のようだった。
なかなか決心がつかない僕とサクラちゃんにお坊さんはこう言った。
「いいですか? あなた方はもうすでにこの世のものではない。どういうわけかあなた方はこの世に入り込んでしまった。しかし、これは試練なのです。ニワトリ人間たちと戦いながら、その持っている短刀をとある場所に納めてほしい。それは山の神さまのお寺にです」
僕とサクラちゃんはお坊さんの言葉に疑った。しかし、このままでは状況は変わらない。だから、僕は決心をする。お坊さんの言う通りに、この短刀を山の神さまのお寺に納めに行く。不安はある。しかし、このままでは状況は危なかった。ニワトリ人間たちが小学校に入って来た。さあ、僕たち三人は戦うことになった。
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