第12話

 生きるってなんだろう。今、僕が生きているかもわからない。そもそも僕は世界に存在していたのかもわからない。横で歩くサクラちゃんをちょっと見て、心が確かにきゅっと締め付けられたのを覚えている。生きるってなんだろう。サクラちゃんが無事だからとりあえず安心だ。けれども、もし僕がすでに死んでいるとしたら? なんのために歩くのかもわからない。その考えはぐるぐると僕の頭に刻まれていく。

 次第に静かになって、赤い空を見上げたから言い知れぬ不安に襲われる。だって、ここは地獄だ。町に帰れるのかもわからない。お母さんに会いたい。涙が出そうになる。泣いちゃダメだ。でも……お母さん……。必死に止めようとした涙が出てくる。僕はさびしさやつらさが押し寄せてくるのをどうしようも出来なかった。サクラちゃんが手を繋いでくれて、ちょっと安心した。でも、お母さんに会いたい。でも、町を守りたい。今はお母さんに会えない。僕は頑張る。

 お経を唱える声がする。僕は涙を拭いた。さあ、戦闘開始だ。黒い十字架の影から坊主が現れる。手に何か持っている。ああ、日本刀かな?

「私の名は処刑坊主、ケンタよ、お母さんに会いたいか?」

「会いたいに決まっているだろ!」

「よろしい、あれを見ろ!」処刑坊主が指をさした先にはお母さんが居た。お母さん‼️ しかし、お母さんは捕まっていた。そして、処刑台、つまりギロチンにお母さんは固定されている。

「ケンタくん! 助けて!」お母さんの表情は涙を流して恐怖に支配されているようだった。僕はあまりの光景に言葉が出なくて立ち尽くす。お母さん、……助けなきゃ!

「ケンタ! お母さんを助けてやる代わりに条件がある。代わりにお前が処刑台に立つのだ!」

「ケンタくん! ダメよ! お母さんが犠牲になるから!」

「ケンタくん、行っちゃイヤ!」

「ふはは‼️ そうだ! ケンタ! こちらに来い!」

 僕は敵味方の意見に惑わされながら処刑坊主の元に丸腰で歩く。お母さんを助けてあげないと。お母さん、死んじゃイヤだ。お母さん、お母さん、お母さん、お母さん、お母さん……。

 僕は処刑坊主に殴られた。倒れる僕。

「「ケンタくん!」」サクラちゃんとお母さんの叫び声、ニワトリ人間も手を出せない。わかっている。僕は人を殺してしまった。だから、僕は死なないといけない。いかなる理由があろうとも人を殺してはいけない。だから、僕は処刑される。

 僕は処刑坊主に首を絞められる。息が出来ない。気持ち悪い、頭に血が溜まる。助けて、誰か助けて、誰か……!

 しかし、意識が落ちて、次に目が覚めた時には僕はギロチン台に固定されているようだった。横を見るとお母さんが泣き叫んでいた。お母さん、ごめんなさい……。僕は人を殺してしまったのです。

 辺りは暗かった。そして処刑坊主が姿を現した。不気味な笑みを浮かべている。僕は涙を流して恐怖に支配されている。

「ケンタ、気分はどうだろう? 裏切り坊主の気持ちがわかるかね? 殺されるのがどんなものか、今からお前に教えてやる‼️」僕はまた処刑坊主に殴られた。もういい、殺してくれ。僕は処刑坊主につばを吐いた。処刑坊主は顔を真っ赤にしてまたまた僕を殴った。するとお母さんが「処刑坊主、お前がやっているのは正義でもなんでもない‼️ ただの暴力だよ!」と怒った。僕はその言葉を聞いて納得するも、罪悪感に苦悩する。

 処刑坊主は笑う。不気味な笑みを浮かべて。息が出来ない、僕は涙を流して恐怖に支配される。早く、誰か助けて!

「これで終わりだ‼️ バカ親子め!」処刑坊主がロープを切ったようだ。僕は目をつぶった。そして、数秒間は息が出来た。………………あれ? 僕は恐る恐る目を開けた。あ! サクラちゃん‼️ サクラちゃんは笑顔だった。

「ケンタくん、お母さん、もう安心してね?」僕とお母さんはギロチン台から解放された。ギロチンは複数のニワトリ人間がロープを引っ張って止めてくれている。不死鳥もいる。あ! 処刑坊主は?

「ケンタくん、処刑坊主は不死鳥がどこかに連れ去ったよ? 安心してね?」サクラちゃんに僕は泣きながら抱きついた。お母さんから頭を撫でられる。怖かったよう‼️ 僕は当分は涙が止まらなかった。

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