第11話

 やけにじめじめしたようなイヤな感覚が僕を襲う。お経は止んだ。代わりに敵である坊主が姿を現した。さて、コイツはなんて呼べばいいのだろう。見た目はお坊さんとあまり変わらない。裏切り坊主も不死身坊主も。いや、それにしても黒い十字架が気になる。

「私の名は魔界坊主。この世界の負の部分を操る者。ケンタ、よくここまで来た」

 さて、能書きはそこまでか? 僕は先手を取った。しかし、急に目の前が暗闇で広がった。ここはどこだ‼️ あれ? みんなが居なくなっている! どういう状況だ‼️

 辺りは紫の世界に変わっている。そして、地面から手が生えて来た。腐った匂いがする。手の主が姿を次々と現す。おびただしい数だ。まるでゾンビのような。なるほど、この動く死体のようなものを相手にしろって? 僕は松明で片っ端からゾンビたちをなぎ倒した。

 どうやらここは死者の世界らしい。しかし、いくら倒してもキリがなかった。ゾンビの動きは鈍い。間を縫うようにして駆け抜けてみた。けれども、どこにも出口はない。ゾンビが押し寄せた。僕は多勢に無勢で押さえ込まれてしまった。なんて気色悪いんだ‼️

 すると、光が差した。空を見た。何かが光を放ちながら飛んで来る。あれは先ほどの不死鳥だろうか? 不死鳥は口から炎を吐いてゾンビたちを焼き尽くした。僕は体勢をなんとか立て直して不死鳥の背中に飛び乗った。そして、不死鳥は飛翔する。相変わらず地面ではゾンビが無限に這い上がって来る。どうするんだ? ここから脱出出来るのか?

 僕の体も光に包まれた。そして、不死鳥の背中に乗ってとてつもなく速いスピードで空間を飛び破った僕。ああ、ここは先ほどの地獄の空間。けれども、地面にはたくさんのニワトリ人間が倒れている。その中にはサクラちゃんの倒れている姿もあった。

「サクラちゃん‼️」僕は大声で何度もサクラちゃんと読んだ。しかし、反応はなかった。「そんな……」僕は絶望する。そうだ! 魔界坊主はどこに居る? 倒してやる‼️

「私はここだ、ケンタ!」魔界坊主が叫んだ。そして、僕は地面に着地、飛び降りた。

 魔界坊主を睨んだ僕。魔界坊主は笑みを浮かべる。サクラちゃんに何をした。絶対に許さない‼️

「いいか? ケンタ、君は人を殺してしまった。裏切り坊主のことだが、はて? 君に私を裁けるのかね?」僕はその言葉を噛み砕いた。ああ、わかっているよ、僕は人を殺してしまった。でもね、僕は目の前の敵を倒さねばならない。サクラちゃんを守りたかった。

 僕は魔界坊主目掛けて突進した。しかし、紫の光線を魔界坊主が放った。それに当たってしまった。僕は全身に激痛を覚えた。動けない、どうしよう。

「ケンタよ、サクラは恐怖の中をさまよっているだろう。それは何にも代えがたい苦痛。その先にあるのは死だ!」

 ちくしょう、痛くて動けない。しかし、悪趣味な坊主だな! なぜ僕を眺めて……あれ? 魔界坊主が驚いた表情をしている。ようし、ちょっと動けるようになってきた。僕は激痛に耐えながら立ち上がった。

「なぜだ? なぜゾンビにならない? そうか、ケンタ、君はすでに死んでいるのか?」

 何を寝ぼけたことを。僕は全身の痛みがなくなった。そして、松明を拾って魔界坊主に向ける。さあ、覚悟しろ。

 すると、魔界坊主はふっと消えた。うん? 逃げたのか? あ! それよりもサクラちゃんは大丈夫かな? 僕は倒れているサクラちゃんに駆け寄った。

「サクラちゃん‼️ 大丈夫? ねえ!」

 少しの間は動かなかったけど、サクラちゃんは目をゆっくりと開けた。よかった……。生きている。

「ねえ、ケンタくん? 魔界坊主はどうしたの?」

「逃げたよ? それよりもケガはない?」

「大丈夫よ? 気絶していたみたい」

 周りのニワトリ人間たちもみんな起き上がる。よかった、……それにしても、僕が死んでいる? そんなバカな。僕はサクラちゃんに肩を貸して歩き始める。

「ねえ、ケンタくん? 私たちって生きているの?」

 サクラちゃんのその問いに僕は何も答えられなかった。

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