第6話
神社にやって来た。昼間だと言うのに、人が居ないせいか不気味だ。とりあえず、サクラちゃんと話し合って手掛かりを探すことになる。しかし、神社の説明をするような看板がない。神社の中に忍び込むか? 正面から入ることにした。戸を横に引いて開ける。なぜかロウソクの火がついてある。誰か居るのか? サクラちゃんは警戒した方がいいと言った。そして静かに手掛かりを探し始める。なんでもよかった。ニワトリ人間やお札についてのヒントが欲しかった。十分ぐらいは中を探しただろうか。これと言ったヒントは出なかった。
「私は思うけど、今まさにホラー映画の中に私たちは居るって思わない?」
「サクラちゃん、そんなこと言わないで。手掛かりはあった?」
「見つからないよ?」
とりあえず休憩することにした。暑いなぁ、のどが渇いたなぁ。あーあ、なんか不気味だし。サクラちゃんも表情が暗いし、僕も諦めたくなるよ。ふと別の方向を見る。あ、あれは倉庫かな? ひとりで見てみようか?
倉庫はそれほど大きくなかった。ただ物置小屋なんだろうなと思った。戸を引いてみる。ちょっと開けづらいけどなんとか中に入れた。ほこりの匂いが強い。中は色んなガラクタらしきものがある。とりあえず、ひとつずつ見るか? 御守りが山積みで見たところ新しそうだ。売り物かな? それとももういらないのかな? 竹トンボが出てきた。あ、あとは木の箱。これに何か入っているのかな? サクラちゃんにも見せよう。
「サクラちゃん、これに手掛かりがあるかもしれないよ?」
「虫とか出てこないでしょうね?」
さあ、開けてみよう。ふたを取ってみた。しかし、中には何も入っていない。サクラちゃんから冷たい視線を感じる。え、何もないってどういうわけ? 僕は神社を少しだけ恨んだ。木の箱を元に戻してサクラちゃんと木陰で休む。
『ケンタ、聞こえるか?』え? 誰? ちょっと驚いて立ち上がった。しかし、周囲に人が居ない。あれ? サクラちゃんの声でもなかったぞ?
「どうしたの? ケンタくん」
「声が聞こえる……」
『ケンタ、ニワトリ人間の居場所を言おう。今は近くの山に隠れておる。お札を取り返してほしい』
「待って! 何者なの?」
『ニワトリの神さまだ』この言葉を聞いてしばらく経ってもその声は聞こえなくなった。サクラちゃんにこのことを話した。
「それってさっきの木の箱のせい?」
僕は考えてみる。暑いから何か変な体調になったかもしれない。でも、今の状況だとあり得る。ひょっとしたら本当に神さまなのかもしれない。
僕とサクラちゃんは山に向かった。しかし、予想以上に道は険しい。それにしてもさっきの声は僕だけに聞こえたのか? 変な夢を見ている気分だ。
ふと、前方を見た。あれはニワトリだ。
「サクラちゃん、けっこうな数がいるけど、あれらはニワトリ人間に変身するのかな?」
サクラちゃんは何も言わない。頭を抱えている。けれども、あれだけいるってことはお札はすぐ近くにありそうだ。さて、どうしよう?
動けない状態が続いて気付けば夜になっていた。すると、パチパチという音と火の手が上がった。あ、そうか! ニワトリ人間は他にも居たのだ! 急いで逃げなくては!
サクラちゃんの手を引っ張って少し走ったところでひとりのニワトリ人間が立ちはだかる。そうかい、リベンジだな、これは……。僕は石を手当たり次第握りしめてニワトリ人間に投げつけた。サクラちゃんも石を投げる。しかし、ニワトリ人間は痛がる様子を見せるものの倒れる気配はなかった。
けれども、今回は違った。ニワトリ人間が逃げたのだ。ようし、こうなったら追いかけてやる!
『待て、ケンタ! それは罠だ! 奴らニワトリ人間は頭が賢い! お札を探すのだ!』僕は声に従った。サクラちゃんの手を引っ張って探す。火の手がかなり上がっている。でも、どこにお札があるのだ? 見当がつかない。それから火の手が僕たちを襲う。僕たちは逃げようとした。しかし、またしてもニワトリ人間の作戦に倒れてしまった。
僕は目を覚ますと全身が絶望に包まれていた。いつまで戦えばいい? いつまでも? 僕は泣いていた。
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