第3話

 クラスメイトの連携は見事なものである。誰かが引き付けておいて背後から木の棒で叩きつける。普段から運動神経がよくてサッカーとかをしているからチームワークが発揮されている。しかし、状況は悪い方向へ傾いた。

 クラスメイトのひとりが反撃を受けて倒れていく。僕は飛び出して戦うか判断に困った。倒れたクラスメイトの足を掴んで引きずっていこうとする何者か。そこにクラスメイトたちはその何者かを袋叩きにする。しかし、松明をぶぅんぶぅん‼️ と振り回してクラスメイトらを散り散りにさせる。かなりアイツは屈強だ。呻く声がする。クラスメイトの二人目が振り回された松明に当たったらしい。地面で頭をおさえている。クラスメイトたちの表情は暗くて見えにくいが、恐らく恐怖を目の当たりにして戦意を無くしているのだろう。さっきまでの勢いがクラスメイトたちにはなかった。チームワークもガタガタ。ひとりずつ狩られていく。

 僕は恐怖のあまりにどうやって逃げたのかはわからない。気が付けば自宅のベッドの中でガタガタと震えていた。逃げてみんなごめん! 心の中でひたすら捕まったであろうクラスメイトたちに対して謝った。どうしたらいいのだろう。明日はどうなるんだ。クラスメイトは? ニワトリは? とんでもないことになった。恐怖の中で僕は眠りについた。

 次の日の朝はたまらなく怖かった。でも学校に行かなければならない。クラスメイトはどうなったのだろう。玄関から外に出る。サクラちゃんが待っていた。そして、こう言われた。

「ケンタくん、他のみんなはどうしたの?」その質問に改めて僕は現実に打ちのめされる。僕は何も言えない。

「ケンタくん、朝から電話が回っていてね、他のみんなは家に居ないのよ?」僕は気が狂いそうになる。どうしてあの時、僕はクラスメイトを見捨てて逃げたんだと。

「でも、私はケンタくんが無事でよかった」

 僕とサクラちゃんは登校してニワトリ小屋に向かった。今日はニワトリは無事だった。そうだとしたら、今ごろクラスメイトの数人は……?

 授業はいつも通りに始まった。ただし、席はいくつか空いていた。僕はまたしても気分が悪くなって保健室に横になった。サクラちゃんは放課後に迎えに来てくれた。しかし、恐怖が僕を包む。

 次の日から僕は学校に行きたくなくなった。それでもサクラちゃんが放課後に遊びに来てくれる。サクラちゃんから聞いた話は、今日はニワトリが無事だった、今日はニワトリが焼かれていた。そして、クラスメイトの数人はまだ学校に来ていない。だった。カレンダーとデジタル時計は、7月始めの月曜日と火曜日を行ったり来たりを繰り返している。悪い夢だ。いつになったら覚めるのだ?

 しばらくして、僕はまた学校に通うようになる。しかし、ニワトリ小屋は不気味にそこにあった。サクラちゃんは深い事情は僕に聞いてこなかった。その代わりに、いつになったら夏休みは来るのだろうと話していた。全くもって謎が解けない。なぜクラスメイトだけが帰ってこないのか。ニワトリは焼かれては復活を繰り返した。しかし、クラスメイト数人は帰ってこない。時間も進まない。

 クラスでとあるウワサが流れる。それはニワトリの呪い話。ニワトリが時間を止めて誰かが助けてくれるのを待っているというもの。しかし、そのウワサは学校に留まらず、町中に広まった。そのウワサの名前は、無限のニワトリ。僕はサクラちゃんとそのウワサ話について話し合った。

「私はこういう話は意味がないって思ったの」

「どうして?」

「だって誰も証明出来ないじゃないの」

 言われてみたらそうだ。冷静になれば、それは根拠のない話。でも、みんなの記憶が、7月始めの月曜日と火曜日を繰り返しているという。なんだろう。集団ヒステリーの一種か?

「私は学校に行かない。ケンタくんも私と遊んで」

 学校に行かなくなった僕たちは昼間は町を散歩した。それにしても、今この町で何が起こっているのだろう? ふと、僕とサクラちゃんはとある神社に入る。漢字が読めなかった。鳥居をくぐっておまいりをした。それから神社の裏庭に入る。すると地面に一羽のニワトリが死んでいた。サクラちゃんが思い出したかのようにこう言った。

「そういえばこの神社はニワトリをまつっているんだって、何かで聞いたことがある……」

 僕はそれを聞いて鳥肌が立った。

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