第2話

 火曜日の朝にサクラちゃんと登校している。夏休みがもうすぐだよねと話が弾む。僕は夢のことは忘れている。それにしてもなんだったのだろう。学校のニワトリが焼かれた夢。変な夢を見たものだ。

 僕とサクラちゃんは学校に着いた。校庭では生徒がざわざわしている。え? この感じは夢でも見たような。それともあれも今も夢の中? サクラちゃんが「何があったんだろう?」とつぶやいた。僕は急に怖くなった。それでも確認しないといけない。サクラちゃんの手を引っ張ってニワトリ小屋に向かった。

「何これ……」サクラちゃんが口を手で覆った。全く一緒だった。小屋は焼けたようなあと、中の床には黒く焼かれた何かと白い羽が散乱していた。目の前のことが信じられない。変な気分が僕を襲う。

「お前ら! 教室に戻れ!」男の先生が怒鳴り付けてニワトリ小屋に集まっていた生徒たちを教室に戻している。僕とサクラちゃんも教室に向かった。

「ひどすぎるよね、ケンタくんはどう思う?」

 僕はサクラちゃんにそう聞かれて何を言えばいいのかわからなかった。言えることはなぜニワトリが焼かれる夢なのか?

「今は夢の中なのか?」僕の言葉にサクラちゃんはきょとんとしている。それから「なんでもない」と付け足しておいた。

 僕は保健室で休むことにした。ベッドに潜り込んであれやこれやと考えてみる。頭が混乱しそうだ。だって、そもそも今日が何曜日なのかすらも、僕はわかっていないのかもしれない。夢なら早く覚めてほしい。

 僕は頭のなかがぐるぐると渦巻いている感覚に包まれた。それからいつの間にか眠りについていた。

「ケンタくん、帰ろう?」もう放課後だった。サクラちゃんが迎えに来てくれている。僕たちは下校途中に何を話したのか、僕はよく覚えていなかった。どうしたのだろう。悪い夢を見ているようだ。

 次の日の朝に僕は今日が何曜日なのかわからなくなった。ニワトリ小屋は元に戻っていて、中のニワトリも普通にそこにいた。横に居るサクラちゃんはいつも通りだし、僕だけが悪い夢を見ているようだった。

 しかし、また次の日にはニワトリは焼き殺されていた。だんだん感覚がマヒしてくる。ニワトリは焼かれては復活を繰り返した。

 けれども、男の先生がこう言った。「いったい何がどうなっているんだ」と。どうやら僕だけではないらしい。徐々に周りのみんなも異常さに気付いたらしい。けれども、いったいどこからどこまでが本当のことなのだろう? これは夢なのか。はたまた時間を繰り返しているのか。しかし、どれも仮説の中の話である。それからひとつのことに気付いた僕はクラスメイトのみんなにこう言った。

「誰がニワトリを焼いたのか? 犯人を捕まえよう」これにみんなは賛成してくれた。サクラちゃんもニワトリが可哀想と言っている。けれども、みんなで推測を立てるうちに誰かがこう言った。

「ニワトリは夜に焼き殺されているのでは?」それを聞いてクラスメイトのみんなは顔を見合わせる。それからちょっとみんなで考えてみた。どうやって夜の学校に入り込むのだろうと。

 みんなで作戦を立て始める。夜の学校に入り込むのは僕を含む男子だけ。クラスメイトの運動神経がいいヤツが候補にあがる。もしもの時のために丈夫な武器もほしい。放課後にクラスメイトの男子、数人と僕は丈夫な木の棒や、とにかく武器として使えそうな物をかき集めた。そして夜になる。

 夜の学校は灯りが全くついていなかった。そうして僕たちは学校の塀を軽々と乗り越えた。しんと静まり返っている。とりあえず僕たちは物陰に隠れる。どこから犯人が来てもいいようにバランスよくニワトリ小屋の周辺の物陰に隠れた。腕時計を見ると夜の九時だ。みんなが息を潜める。

 ジャリ、ジャリ、ジャリ。

 誰かが歩いてくる。僕は血の気が一気に引いた。怖い。しかし、犯人を捕まえなければならない。

 ジャリ、ジャリ、ジャリ。その音の方を見た。誰かがニワトリ小屋に向かって歩いてくる。その手にはどうやら松明。クラスメイトの誰かが、わあっと木の棒を片手に物陰から勢いよく飛び出した。つられてみんなも飛び出した。しかし、僕は恐怖のあまりに固まってしまっていた。松明がぶぅんぶぅん‼️ と振り回されている。僕は息を殺してクラスメイトの戦闘を見守った。

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