無限のニワトリ

野口マッハ剛(ごう)

第1話

 雨は遠ざかる。次第に暑くなる。青空が当たり前になりそう。あの雲の上に乗りたい。でも空想に過ぎないのだろうなぁ。やっぱり綿菓子に見える。雲って美味しそうだなぁ。あーあ、勉強は退屈。早く放課後にならないかなぁ。

 そろそろ学校から解放されると思うと、僕は心が色んな遊びのことに気が向いている。家にクラスメイトのサクラちゃんを呼んでゲームをしてもいいし、さらに他のクラスメイトたちでサッカーをしてもいい。遊びたい、勉強はどうでもいい。

 学校が終わってサクラちゃんと二人で下校する。小学一年生から六年間、同じクラスになって今では友だちのサクラちゃん。気付いたらいつも一緒に居る。でも、同い年だけどサクラちゃんが大人っぽく見えるのはどうしてだろう。

「ケンタくんって、夏休みは何をするの?」そう聞かれて、僕は少し考えてみる。

「サクラちゃんと遊びたい」それを聞いて私も、と返ってくる。

 二人で笑顔になって下校した。

 次の日の火曜日、校庭にはたくさんの生徒がざわざわしていた。なんだろう? サクラちゃんと顔を見合わせる。

「本当かよ! 飼ってたニワトリが丸焦げになっているんだって!」そう叫んだのはとあるクラスメイト。え? どうして? 僕は不思議に思って、サクラちゃんとニワトリの小屋に向かった。

「何これ……」サクラちゃんが口を手で覆った。小屋はかなり黒く焼けたようなあとだった。そして、小屋の床には黒い何かと白い羽が散乱していた。それを見た時に、男の先生がやって来てこうみんなに言った。

「お前ら‼️ 教室に入れ!」ちょっとその言葉が怖かった。本当に何があったんだ? 僕とサクラちゃんは教室に向かった。その間にこう話した。

「サクラちゃんは、どう思う?」

「ひどすぎるよ」

「そうだよね、僕はよくわからない」

「どうして?」

「信じられないんだ」

 僕は自分の目で見たものがピンと来なかった。つまりはこういうこと? 誰かがニワトリを焼いたってこと? 誰が? なんのために? 夏休みを待つ気分なんか軽く吹き飛んだ。

「いいか? みんな落ち着くように」担任の先生は冷静にそう言った。

「先生! なんか怖いです!」

「私も!」

「僕も!」

 クラスはざわざわとなり始めた。

「落ち着け! いいから落ち着くように!」

 その中で僕は考えてみる。どうしてニワトリは焼かれたのか? 少なくとも今の時点では断言が出来ないのだろうけど。そう言えばニワトリに名前ってあったっけ? 思い出そうとして、やっぱり名前が付けられていなかったことに気付いた。

 その日の学校ではニワトリが焼き殺されたって話題に持ちきりだった。そして家に帰ってから、お母さんからニワトリのことを聞かれた。僕はちょっと怖くなった。でも、僕は小学六年生だから泣かない。

 目が覚めた。今日は水曜日。けれども、デジタル時計を見ると月曜日になっている。あれ? 今日は月曜日? 少し考えて僕の記憶が間違っているのだろうと思った。

 サクラちゃんと二人で登校。サクラちゃんの表情は穏やかそうだった。あれ? ニワトリの話をしない? 出てくる話は夏休みのこと。あれ? 学校のニワトリ小屋にニワトリがいつも通りに一羽だけいる。あれ? 僕はどうしたのだろう。

 ずっと授業中にニワトリのことを考えていた。あれ? 確か昨日はニワトリ小屋が焼かれていたような。でも、今日はいつも通り。ということは僕が何かを勘違いしているのかなぁ。それにしてもみんなはいつも通り。どういうわけだろう。

 コケコッコー‼️

 夢でも見ているのか。それにしては生々しいような。夢の感じがひとつもなかった。でも、この授業は受けたことがあるような。

 僕は途中から気分が悪くなって保健室で休むことにした。ベッドに潜り込んで色んなことを考えて、それから疲れて、眠くなって……。

 起きたら放課後になっていた。サクラちゃんが迎えに来てくれている。僕たち二人は下校前にニワトリ小屋に行った。いつも通り。

「ねえ、ケンタくんって何かあったの?」サクラちゃんの心配そうな声。僕は何かを言おうとしてやめた。きっとこれは夢なのだ。だから、帰ってすぐに寝よう。そうだ、これは何かの夢なのだ。

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