「石橋脩や水口優也を追いかけるのは結構、だが······」
夢子は
騎手の追っかけみたいなことをしていて、大穴馬券にありつけるのならば世話がない。しかし夢子は、オルフェーヴルが惨敗した天皇賞・春で、石橋脩が乗っているからという理由で、ビートブラックの単勝と複勝を買って的中させたと言い張っている。夢子は
帰りの総武線車内でも、トウジの怒りは収まらなかった。
ラジオNIKKEI賞で一番人気だったのは、石橋脩が乗るフィエールマンだった。
トウジはフィエールマン
ところが、フィエールマンは4コーナーでもまだ
トウジは石橋脩の騎乗に納得できなかった。もっと早くに追い上げていかなければ、福島の短い直線で先行する馬を差し切ることはできない。フィエールマンは
やれイケメンジョッキーだと騒ぐのは勝手だ。石橋脩のお
だが、桜花賞とオークスを両方ともアーモンドアイ一着固定で当てたトウジにはそんなの関係ない。フィエールマンにしても、今回の
「ラジオNIKKEI賞の石橋脩、観たか? 4コーナーで置き去りにされていたぞ」
トウジは
それはそうと、ストレスが溜まったので、アンミツをお代わりしてしまった。
「トウジくん、メインレースも1レースも同じだって言ってたじゃん」
「たしかにおれはそう言った。メインレースだからといって、レートを上げたりはしない。しかしそれでも、いちばん強い馬で4コーナーで置き去りにされる
「人のせいにするのはよくないよ」
「おれたちは大事なカネを預けてるんだぞ!?」
「お金を預けるって······、馬や騎手は銀行じゃないよ」
言い返せず、アンミツを食う手がピタリと止まってしまった。
「CBC賞はどうだったの」
「デムーロ本命で外したよ。武豊がああいう競馬で負けるのだけ予想通りだった。そのあと中京と福島の最終レースで少し取り返したけど、財布の中身は減っていた」
「わたしは
「おまえセカンドテーブルの追っかけだったのか」
「だって水口くんまだ重賞勝ってないじゃん。去年のCBC賞も惜しかったけど、今年だってCBC賞が1000メートルだったら勝ってたかもしれないのに」
「ほざけ」
「重賞をまだ勝っていないジョッキーや、
「フルキチはアインブライドで20年以上前にG1勝ってるぞ」
「うそっ!」
「おまえロマン派じゃなかったのか? 今まで何して生きてきたんだ? おれは競馬はスポーツですよ派なら、G1の歴代勝ち馬は全部知ってると思ってたぞ?」
熱い日本茶を飲み下し、うつむき気味の夢子に言ってやった。
「競馬はギャンブル派ですよ派のほうが、競馬史に詳しいじゃねーか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます