夏競馬が好きな男
宝塚記念が終わり、東京開催と阪神開催が終了。福島・中京・函館の
夢子はあまり馬券の勝った・負けたに関心がない。新聞も見ないで、パドックでずーっと周回する馬を眺めているだけのことも多い。パドックで馬体を見て予想をしているのではなく、ただ単に馬の
皐月賞の翌週(4月第4週)から先週の開催日まで、夢子はずっと東京競馬場に通い詰め、ホースリンクという引退馬が間近で観られるスポットを足繁く訪れていた。
気持ちはわかる。
ぼくも、東京競馬場で、馬券を買ってレースを観るのに疲れたときは、ホースリンクに展示されている馬の
だけど夢子は異常だ。たぶんフジビュースタンドの4階と2階と1階に、ほとんど足を踏み入れたことがないのではないか。なぜフジビュースタンド4階・2階・1階に行かないのが異常なのかというと、フジビュースタンド4階・2階・1階は東京競馬場の主要な投票所であり、指定席利用者を除けば、馬券購入者が
トウジは夢子のそういう競馬スタイルが気に食わなかった。競馬の運営が、何によって支えられていると思っているのか。とうぜん、俺たちが買った馬券の収益によってではないか。夢子は競馬をスポーツだと思っている。夢子は間違っている。競馬の本質はギャンブルだ。理想主義者は現実逃避主義者だ。ロマン派はいつか罠にかかる……。
6月30日。福島・中京初日、函館5日目。
一昔前と比べればずいぶん様変わりしたウインズ後楽園で、トウジは函館1レースから福島最終レースまで馬券をひたすら買い続けていた。
トウジは夏競馬が好きだった。トウジは、日本ダービーや有馬記念での馬券勝負を見送ることがあるほど、馬券に対しストイックだった。
トウジが夏競馬を好くのは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます