【番外編】夏 「ちょっと流れ星でも観に行きませんか?」(2)青山高原に到着
『立秋を過ぎたとは言え、まだまだ残暑が厳しい夏の夜は青山高原がいい。ちょっと遠出をして流れ星でも見に行こか……』
出町柳駅前でエンジンを掛け、ゆっくりとバイクを発進させる。
そやけど直ぐに川端今出川の交差点で信号に捕まる。ブレーキを掛けると背中の柔らかい感触がプニュっと広がった。これはかなり大きそう……。いやいや、集中、集中!
信号が青に変わったんで川端通りをゆっくり走って南下する。タイミングが良かったんか川端三条(京都市東山区)の交差点までノンストップでこれた。
「どう、大丈夫」
振り返ってひとみを見る。
「うん、大丈夫ー」
「暑ないか?」
夕日が沈んでまだ間がない。
「うん、走ってたら気持ちええよー」
「そうか、ほな行くでー」
信号が青になって走り出す。川端四条では少し渋滞したけど、なんとかすり抜けられた。
一橋宮ノ内町から川端通りは師団街道と名前が変わる。順調に進み、名神高速道路の下を潜ると左り右の直角カーブを過ぎ、ここから一方通行の師団街道を国道24号線まで下る。
左折して国道24号線をひたすら走る。伏見桃山城(京都市伏見区)を左手にみながら暫く走ると観月橋に差し掛かり、この橋で宇治川を越える。
高層マンションがある向島を過ぎ、暫く行くと京滋バイバスの下の交差点(京都府宇治市)で信号に引っかかった。この道はここから府道69号線(旧国道24号線)と名前は変わるけどそのまま真っ直ぐ南下する。
「晩ご飯にラーメン食べへん?」
「えっ、ラーメン。食べよ食べよ!」
「よし。ほんなら城陽で止まるはわ」
「うん」
青になったんでひたすら真っ直ぐ走る。大久保の交差点で渋滞したけど、なんとか城陽市役所の先のパチンコ屋の敷地にあるラーメン屋(京都府城陽市)に着いた。
「さて、何食べる。奢るで」
「おおきに。何が美味しいのぉ」
「やっぱり台湾ラーメンかな」
「和くんはそれ食べるの?」
「おお」
「そしらた私も!」
豚骨ベースで野菜たっぷり。玉葱の甘さとピリ辛の刺激が絶妙で、スープまで美味しく頂いた。
「さー、これからが本番やで。ちょっとスピード出すし、しっかり掴まっといてや」
「うん。気を付けてねぇ」
そこから南下すると城陽新池の交差点で再び国道24号線になる。市街地を抜けると木津川の土手(京都府井手町)沿いに走る。交通量も大分減ってきたんで速度を上げる。
快適に走り、上狛四丁町の交差点(京都府木津川市山城町)で左折して国道163号線に入る。ここからは多少のカーブもあるけど、木津川沿いに快調に走れる。
たまに遅い大型のトラックなんかが走ってるとイライラする位、快適に走れる道や。
南山城村(京都府相楽郡)に入ると長い北大河原トンネルがあり、その後多少の起伏があるけどゆったりしたコーナーなんで結構飛ばせる。気温も下がり、涼しくなってきた。
遅い車は登坂車線のあるとこで追い抜いてしまおう。
急に加速してスピードを出すと、
「きゃっ!」
と言うひとみの声が聞こえたけど、しっかりと僕に掴まってるんで安心してトラックを追い抜く。背中にはひとみの温もりが感じられた。
下ってからの急な左カーブがあるJR関西本線月ヶ瀬口駅付近を過ぎると、そろそろ三重県は伊賀市に入る。
やっぱり遅い車は登坂車線で追い抜いとこ。
通称「大和街道」で山間部を走り、下って開けた所に出てきたら最初の信号を右折する。凡そ250メートル先の十字路を右折して伊賀コリドールロードに入る。
暫く道なりに進み、T字路に当たったら右折して、名阪上野忍者ドライブイン(三重県伊賀市)に入って休憩や。店は閉まってるんで外の自動販売機でコーヒーを買って飲み、公衆トイレもあるし暫しの休憩。
「ひとみぃ……。疲れてへんかぁ」
「うん、大丈夫。なあんか今日はめっちゃ元気やねん」
そう言うひとみの嬉しそうな顔を見て僕もホッとした。
「青山高原まで、あと1時間弱かな」
「そうなん。全然平気よ」
「ここから段々涼しくなってくるから、寒なったら言うてや」
「うん。和くんの……、背中が温かいから……」
「そ、そうか……。ほんなら行こか」
「はい!」
ドライブインを出で、目の前の大内ランプから名阪国道(無料区間)へ入る。覆面パトカーに注意しながら2つ先の上野東ICで左に降り、交差点を右折して国道422号線に入って青山を目指す。暫く田んぼの中を走り、再び木津川沿いに走る。伊賀鉄道の踏切が何ヶ所かあるから、一時停止をしっかり行う。
今日は新月やから風景はなんも見えへんけど、街の灯りも然程多くなく、そろそろ星が綺麗に見えだす所や。
青山羽根の交差点に来たら、左折して国道165号線、通称「初瀬街道」に入り、道なりにどんどん飛ばす。
トンネルを抜けて木津川を渡ると、そこから高度が増してくる。この辺で標高約210メートル。これから一気に標高460メートルまで上げるけど、殆どカーブのない谷間の道なんでどんどんスピードを上げる。
直列2気筒エンジンの振動を股間に、背中にはひとみの柔らかさと温もりを感じながら気持ちよく走る。
近鉄大阪線西青山駅の下を通過してから3km程進むと、トンネルの手前に右に入るT字路(標高460メートル)があるんで、右折して県道512号線、通称「青山高原道路」に入る。
ここからはワインディングもある登りが続き、高度を更に上げていく。
途中3ヶ所程きついヘアピンカーブがあるので僕はひとみの事を考慮してゆっくり走ったけど、ひとみはひとみで上手いこと体重移動をしてくれる。
すんなりとヘアピンを抜け、一旦高度を下げて再び上がり、左手に建物(山頂小屋)が見えたら右に曲がって三角点車場に入り、バイクを停める。
稜線がぼぼ三重県の伊賀市と津市の境目になる布引山地、通称「青山高原」に到着した。
つづく
※走行データ
出町柳駅(京都市左京区)-ラーメン屋(京都府城陽市)約21.1km
ラーメン屋-ドライブイン(三重県伊賀市) 約46.5km
ドライブイン-青山高原三角点駐車場 約29.9km
※気温データ(ある日の実際のデータ)
京阪出町柳駅前(京都市左京区) 32度
ラーメン屋(京都府城陽市) 30度
上狛四丁町交差点(京都府木津川市山城町) 27度
北大河原トンネル(京都府相楽郡南山城村) 25度
名阪上野忍者ドライブイン(三重県伊賀市) 26度
青山高原三角点(三重県津市) 22度
※青山高原の公衆トイレ
三角点駐車場、第1、第3、第4駐車場にあります。
※ペルセウス座流星群のデータ
ペルセウス座流星群は毎年8月13日前後に出現してますが、ここ数年で「好条件」にて観測できそうな日を以下に示します。
(1)2018年は8月13日の10時が極大ですが日の出後なので、12日の深夜から13日の空が明るくなるまでがお薦めです。月齢も1.73と月明かりもなく比較的良い条件で観られるでしょう。
(2)2021年は8月13日の4時が極大です。月齢は4.56ですが22時頃には沈みますので、12日の深夜から13日の空が明るくなるまでが、かなり良い条件で観られるでしょう。
(3)2024年は8月12日の23時が極大です。月齢は7.62ですが23時頃には沈みますので、12日の夜半から13日の未明に掛けてが、かなりの良い条件で観られるでしょう。
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