第12話 家族旅行

知恵子と昌吉は、毎年 家族旅行に出かけた。

家族旅行は、前もって計画するのではなく

昌吉の気が向いた時に、行き当たりばったりで場所を決めて、当日 旅館の手配をする。

観光中心の旅行ではなく、ゆったりと過ごす為の旅行であった。

なので、遠方に行く事は少なく

近場で楽しむ。

食事にこだわりがあったので

宿泊代は、ケチらない!

主な旅行先は、鳥羽 白浜等で海水浴をする事であった。

長島温泉や城崎へも行った。

一番の遠方は、九州 別府の地獄めぐりだった。


ある日、いつものように行き当たりばったりで場所を決めた。

行き先は、鳥羽である。

しかも、お盆の時期であった。

鳥羽周辺では、プラカードを持ったおじさんが数名立っていた。

行き当たりばったりで宿が決まらない人達に

宿を紹介する。

おじさんから紹介された宿は、ボロボロの民宿であった。

幾らでもお金が出せるのであれば

お盆の時期であろうとも、お正月であろうとも、飛び込みで宿泊先を決める事は可能である。

だが、通常の倍の値段を出してまで

泊まるという気は毛頭なかった。

仕方なく、知恵子 昌吉 吉子 剛志は

旅行を諦めて、ヤケクソで最寄りの駅周辺にあるパチンコ屋でパチンコをする事にした。


吉子は、なんだか嬉しく思った。

家族でワイワイガヤガヤ…

家族には、自分の居場所が無いのでは?と思っていたが、自分も家族の一員なんだ!と痛感していた。


いつもは、優等生の剛志が注目の的であったが、なぜか?旅行先では家族全員 吉子をイジっては、冗談を言い合っていた。

「オネエ、また、寝てる!」

「吉子は、乗り物乗るたびに寝てるな!」

「よくそんなに眠れるもんや!」

「だって、乗り物乗ると気持ち良くなって

眠くなるねんもん。」


旅行は、家族の絆を高めるという効果があった。


二人とも20歳を超える頃迄

毎年、旅行に出かけたものだ。




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