第5話 千恵子!結婚

千恵子は、厳格で依怙贔屓が醜い母親から

逃れたいと言う気持ちがあったという事と

24歳と言う年齢は、当時の日本では

結婚適齢期ギリギリの年齢と言われてた為

昌吉とのお見合い話を進めて貰った。


昌吉は、29歳で大工の仕事をしていた。

建築業の仕事は、年齢関係なく

稼ぐ事が、可能であった。

当時の日本人の体格としては、中背で

痩せていた。

顔は、好みではなかったが

社交的で頼もしい雰囲気の男性であった。


縁談を持ち掛けでくれた知人が

「昌吉さん、よく稼ぎはるし

悪くないと思うよ。

千恵子さんも、そろそろ決めな

オールドミスになってしまうよ。」と

プレッシャーを掛けてきた。


千恵子は、昌吉との結婚を決意する。


千恵子と昌吉は、昌吉の実家近くの文化住宅に

住まいを構えた。

大阪の環状線玉造界隈に、昌吉の実家はあった。


結婚前は、温厚で優しい昌吉であったが

結婚するや否や、昌吉は本性をさらけ出す。


ものすごく、お酒好きで

新婚当初から、友達を家に連れてきては

酒を浴びるように飲んでいた。


職人気質そのもので、とても頑固で

宵越しの金は持たない!持たせない!

昌吉は、稼ぎの中から生活費だけを

千恵子に渡して、残りのお金を自分で管理する。

残ったお金は、酒代 競馬 パチンコに使ったり

友達に奢ったりする。


そんな昌吉との結婚生活であったが

千恵子は、昌吉との間に二人の子どもを授かった。

結婚して、すぐに授かるが流産してしまう。

ところが、その3ヶ月後に再度妊娠した。


そして、めでたく生まれた子は

女の子であった。

千恵子は、その女の子の名前に

奈津子か彩子を…と考えたが

昌吉が、自分の名前を一文字取る事に拘る。

吉子と名付けた。

吉子は、美人ではないが

なかなか愛嬌のある女の子だった。

昌吉と千恵子は、親バカで

「別嬪さんやろ!うちの娘。」と

皆んなに自慢していた。


昌吉と千恵子は、自分の家を持ちたい!と

思っていたので、吉子を昌吉の母 絹子に預け

共稼ぎをする事にした。


昌吉は、偏屈オヤジであったが

ものすごく子煩悩で、吉子を体操可愛がった。

何度も何度も、吉子の顔を見てはニヤリと

微笑んでいた。


吉子は、お乳をあまり飲んでくれない。

ある日、授乳中に焼け付くような胸の痛みを

感じた。

乳腺炎であった。


昌吉の父親に祈祷してもらい

母乳からミルクに変更した。


昌吉の父親は、大工とお坊さんのお仕事を

兼業していた。

なぜなら、11人兄弟であったからだ。

昌吉は、11人兄弟の真ん中 六番目に生まれてる。

七男 四女であった。

昌吉の両親は、二人とも千恵子に優しい。

その上、義兄 義姉 義弟 義妹

兄弟全員、干渉をして来ない。

ただ、義母絹子は優しいが

極度の綺麗好きな性格だったので

口には出さないが、指先で埃を触って

すくい取る仕草をするのである。

千恵子は、その仕草が 嫌だった。


11人兄弟と言っても

昌吉が、結婚した頃には兄弟は、実家を

出ていてて住んでいるのは義父 義母と

戦争未亡人となった次女の琴絵と

末娘の須美だけだった。

須美は、昌吉達が家に入れていたお金で

玉造にある私立の高校へ進学した。

須美は、しっかり者で社交的な娘であった。

須美は、吉子を体操可愛かってくれた。


千恵子は、仕事で帰ってきて

吉子を連れて帰ろうとすると

吉子が、千恵子よりも絹子や須美に懐いて

帰るのを嫌がったりするので

とても、哀しかった。

哀しけれど、悲しんでいる暇はない。

明日になれば、働きにいかないといけない。

「家を買えば、三人でのんびり暮らせる!」

「出来れば、郊外に家を買おう!」と

密かに思っていた。


そんなこんなで…

偏屈オヤジ昌吉との結婚生活は

山あり谷ありであったが

がむしゃらに、働き がむしゃらに

吉子を育てた。


テレビをつけると、石原裕次郎の歌が

流れてくる。

当時の三人娘美空ひばり 江利チエミ

雪村いずみの全盛期で、三人が輝いて見えた。


「私の人生、これで良かったのかな?

風と共に去りぬのレット バトラーのような

男性と出会えた訳でもなく…

こんな酒飲みで偏屈で生活費しか

お金も入れてくれない男と一生を添い遂げる?

あり得ないわ!」と思った。

当時は、余程の理由がない限り

結婚すれば、一生添い遂げると言うのが

必至であった。

離婚なんて、もってのほかであった。


昌吉の長所と言えば…

姑との揉め事では、必ず味方してくれる。

社交的で友達が多く、その友達達は

千恵子に優しい。

六畳一間の文化住宅の一室であったが

昌吉の友達が、入れ替わり立ち代り

訪問する。

そして、千恵子の作ったご飯を

「美味しい!美味しい!」と言って

食べで帰る。

それが、煩わしくもあるが

楽しくもあった。

お正月には、狭い部屋で花札大会を行う。

千恵子も参加させて貰う。


そんな感じの新婚生活であった。



















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