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 ホワイトクリスマス。見事に雪が舞っていてキレイな朝だった。雪は白と言うより銀色のように空から舞い降りてきて幻想的な光景に目を奪われた。

 きっと子どもたちは大はしゃぎで、大人は遅延する電車に苛立っている

ことだろう。自分だっていつも通り大学へ行かなければならなかったら雪なんていい迷惑だと思ったに違いない。

 そう思うとこうゆったりと白銀の世界を自由気ままに眺められることが無性に嬉しかった。

 やがて眺めるだけではなく肌に感じたいと思い部屋を出てナースセンターへと向かう。そこで外で散歩がしたい旨を伝えると

「外すごい寒いし雪も降ってるけどいいの?」

と不思議そうな目で見られた。

「雪が降ってるからいいんじゃないですか。キレイでしょ?」

「ちょっと待ってね。今ドクターの許可をとるからね」

 そのままどこかへ行ってしまった。やることもなくただぼーっと立っていると他の看護婦さんに「広間でa待っててくれれば迎えに行きますよ」と言われその好意に甘えることにした。

15分ほど待って看護婦さんが迎えに来てくれた。

「長時間はダメだけど少しならいいって」

 付添のもとエレベーターで1階まで降りる。そんなに時間が経っている訳でもないのにすごく久しぶりに外の空気を吸った気がした。それはどんなタバコより美味しく胸の痛みが和らげてくれるような気さえした。

 看護婦さんは傘を手渡してくれたが、やんわりとそれを断り病院の外へ一歩踏み出した。

 歩みを進めるたびにシャリシャリと音がなる。まるで生まれたことを祝福するかのような銀色の空。寒さなどまったく感じないで世界の美しさに心打たれ、心奪われていた。

 

 ふと同じように傘を差さないで空を見上げている人がいたに気がついた。

「ま……真夢……?」

 その後ろ姿は妹のような黒の艷やかなロングヘア。細身でそれを隠さないような白のワンピース。

「誰だか知らないけど女を別の人と間違えるのは失礼にもほどがあるんじゃないかしら?」

 振り返った姿は妹の真夢が大人になったような姿。違うのはそのクールな表情と言葉だけ。まるで美しい雪の女王の様に見えた。

「あなた挨拶もできないの? 本当に失礼だわ」

 あまりの驚きで声も出せないでいた俺に痛烈な一言。

 そしてそのまま立ち去ってしまった。

 強烈な出会い。彼女aの事が頭から離れなかった。


 そして今日この階――ホスピスに新しい患者がやってきた。

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