3

 母さんが帰ったあと。もう完全に夜だった。「明日はクリスマスか。なにかもらえるのかな」

 ははっと自虐的な笑みがこぼれた。もうなにをもらっても意味ないじゃん。そうすると圧倒的な孤独感で胸がいっぱいになった。感情に並ぶように胸が熱く痛みだした。あわててナースコールを押す。看護婦が来る前におえっとなにかを口から吐き出した。それは真っ赤で。少しとろっとしていて。血を吐き出したのだということに気がついたのは看護婦が来る直前だった。

 その血を見ていると”死”をリアルに感じて、次は涙が出てきた。

 気が付かなかった。”死”は身近にあって、死ぬことが怖かった。

 

 すぐさまストレッチャーに乗せられICUへと入った。俺は胸の痛みで叫び続ける。程なくして点滴を打たれ痛み止め――モルヒネを注射された。効果は劇的であんなにも胸が熱く痛んでいたのにすぐにその苦しみが去っていた。

 どんな優秀な薬にも副作用はある。痛みがなくなって1時間ぐらい頭はボーッとして、次に多幸感がやってきた。まるでお花畑で踊っているかのよう。意味もなく笑って息が荒くなった。


 一体これを何回繰り返したら俺は死ぬのだろう。


そのまま一晩をICUで過ごし、モルヒネの効果がなくなった頃に最上階に戻された。


 そして12月25日。


 神様は俺にプレゼントをくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る