第2話
続いて渡辺くんが来た。渡辺くんは僕より二つ年下の、二度目の年男だ。年が近い事もあり、コミュ内では仲の良い方だ。
「渡辺です。川口さんと七海さんですか? お会いするのは初めてですね、宜しくお願いします」
「こちらこそ」僕と七海さんはほぼ同時に云った。
正直、コミュ内での渡辺くんはちょっとチャライ印象があったので、きちんとした挨拶に少し驚いた。失礼なので本人には云わないが。しかし予想通り、中々のイケメンだ。
直後に綾瀬さんが来た。綾瀬さんは僕より少し年上の女性で、短文ではっきりとした発言をする。ネット上での印象だけれど。お顔は意外にもおっとりした印象だった。
「綾瀬です。一番遅く来てしまってごめんなさい。皆さんにお会いするのを愉しみにして来ました。今日は宜しくお願いします」
今日集まる予定の四人が全員揃った。
この俳句コミュニティ主催者の三上さんが本日来れないので、僕が代わりに進行役を務める事になっている。
全員でひと通り自己紹介をした後、この会合でのルールを発表した。
■集合はカフェやファミレス等、個室ではないお店にする
■会合の時間は一時間以内にする
■会計は割り勘にする
一つ目のルールは、気楽に安全に集まれるように決めた。
二つ目は、だらだらと集まって、当初の目的(俳句)以外の話題に流れるのを防ぐ為だ。
三つ目は、気楽に、継続してこの会合を続ける為に決めた。
全員ルールに納得をした。
早速俳句を詠み合わせる事にした。普段はコミュ内で俳句を流しているのだが……横書きだと風情が無いと誰かが云った。確かに、余白は余韻として考えているのだが、ネット上だとどうもその効果が薄い気がする。
では実際にお会いしてみて、紙に書いた俳句を詠み合ってみようかという事になり、この会合が決まった。
一応進行役になっている僕から発表した。
画面越し
スライドしたら
さようなら
「……え?」綾瀬さんが本気で困っているような表情をした。
僕はまだ俳句初心者だ。このような反応は想定内だった。僕は補足説明をする。
「これは、ネット上やメッセで俳句をやると、スライドもしくはスクロールして画面が変わったらもう【無かった事】になっているような感情です。季語は入っていませんがご容赦を」
「そうかー、今日の一句目にはぴったりじゃないですか」渡辺くんが笑顔でコメントしてくれた。
渡辺くんはそのまま自分の区を発表した。
紫外線
帽子の影に
君はいる
「ちなみに最後の【はいる】は、【は居る】と【入る】を掛けたってゆーか、どっちもありな状況を想定してこうなりました」
なるほど、つまりこうか。渡辺くんの被っている帽子が影を作り、そこに【君】は居る。もしくは帽子の影に入る程、渡辺くんに寄り添っている距離に居るという事か。渡辺くんらしいなぁ。
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