冒頭
青山えむ
第1話
今日は仕事が終わったらドトールに向かう。
SNSの俳句コミュで集まった仲間達と初めて会うので愉しみでもあり、ちょっとどきどきもしている。
僕達の集まったSNSは一時期は話題になったが、ツイッターやフェイスブックが主流になり今はログインする人が稀なSNSだ。だからそんなに人は多くないし、荒れる事もなく俳句を詠んでいる。
○
僕もツイッターは使っている。短文が楽なのと情報が早いのが良い所だと思っている。しかし何年もやっていると、毎回似たような呟きになる。自分も周りも。
夏は暑いと呟き冬は寒いと呟く。ありきたりなので【地獄絵図】とか【真夏日】とか、ちょっと単語を変える位はする。するとそれすらも【毎回似た】になってしまう。
どうせ短文を呟くなら、俳句や短歌にした方が面白いんじゃないかと思ったのがきっかけだ。
それに自分が知的になったような錯覚も味わえる。
○
僕がコミュに入会したのは三ヶ月ほど前だ。コミュでは週に一度、お題を新しく決めて俳句を作るトピックと、自由気ままに作品を作って載せるトピックがメインだ。感想を書いてくれる人もいる。
真夏に「暑い」と云うのは当たり前の事だし。当たり前が有難いのも知っているが、どのみち皆が同じことを思っているならば、僕は違う単語で「暑い」を表したっていいじゃないか。そう思ったら俄然わくわくしてきた。
仕事中や家にいる時、頭の中に余裕が出来た時は俳句の事を考えている。季語を探すのが愉しい。
○●
待ち合わせ場所、駅前のドトールに来た。僕が一番早く来たようだ。店内隅にある四人掛けのテーブルの奥の方に座った。
僕は本を読んで待っていた。この席の場所と僕の特徴を、メッセでメンバーに送信した。一応、目印として俳句の本をテーブルの端に置いておく事前の約束もある。
○
しばらくすると「あの……」と声をかけられた。
読んでいた本を下げて顔を上げると、ショートヘアが似合う綺麗な顔をした女の子が立っていた。シャツの襟とネクタイとベストが見えた。高校生か?
「七海です」ハスキーボイスだった。そうして彼女は僕の前の席に座った。
七海さんは高校生だ。若いのにとても落ち着いた句を詠む人だ。こんなに綺麗な顔をしていたのか。なんだか頷ける。
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