空が吸い込む

神谷和希

第1話

空が吸い込んだ偽りが

「思い出して」と呟いた朝

霞にさえもならないあのこを

僕はどうすることも出来ない

瞬いた事誰にも知られず漂えるなら


ちっぽけなこと

あのこの傷も

あなたの真っ赤な耳も

空が吸い込むだけ

無くなった写真も

生ぬるいため息も

空が吸い込むだけ



空が吸い込んだ本当を

思い描いて確かめた朝

風となって過ぎるあなたを

僕はどうすることもしない

地に足付け生きていた事誇れるには


ちっぽけなこと

あのこの柔らかい声も

あなたの短い親指も

空が吸い込むだけ

抱き寄せた小さな体も

途切れ途切れの息も

空が吸い込むだけ



夢か真か 混ざり混ざって

僕は息苦しくて

ひとつひとつ ばらばらにして

空に投げる

風が吹いて舞い上がって

空に吸い込まれる

偽りも本当も

笑顔も涙も

自然に還っていく



「気が向いたらまた来てよ」

呟いた僕の声を

空が吸い込んだ

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空が吸い込む 神谷和希 @aki0124

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